
スタートアップを創業して1年半が経ち、プロダクトも形になってきて初期の顧客も獲得できたんだけど、次のステージに進むための資金調達が課題になっているんだ。VCからの資金調達も検討しているけど、株式の希薄化も気になるし…。一方で、大手企業との契約も数件取れたものの、入金までのサイクルが長くて、この成長フェーズの資金繰りが厳しい状況なんだよね。

スタートアップ特有の悩みですね。プロダクトと顧客の手応えはあるのに、成長に必要な資金と実際のキャッシュフローにギャップがある状況ですね。創業初期は特に資金調達の選択肢が限られがちですが、実は売掛金を活用した方法もあるんですよ。

売掛金?まだ事業実績が少ないスタートアップでも使える方法があるの?銀行融資は審査が厳しいし、VCは交渉に時間がかかる。でも今すぐにチームを拡大したり、マーケティング投資を増やしたりする資金が必要なんだ…

スタートアップ向けのファクタリングサービスという選択肢があります。この記事では、売掛金を早期に現金化して成長資金に充てる方法や、スタートアップに適したファクタリング会社の選び方、実際の成功事例まで詳しく解説しています。株式を手放すことなく、また事業実績が少なくても資金調達できる具体的な戦略が学べる内容になっていますよ。
スタートアップ企業にとって資金調達は常に大きな課題です。特にIT業界では初期投資や人材確保のための資金需要が大きい一方、収益化までに時間がかかるケースが多く、柔軟な資金調達戦略が求められます。今回はファクタリングとベンチャーキャピタル(VC)という性質の異なる資金調達手段を組み合わせることで成長を加速させた成功事例を紹介します。
スタートアップが直面する資金調達の課題
IT業界のスタートアップ企業は、独自の技術やサービスを開発し、急速な成長を目指します。しかし、その過程ではさまざまな資金調達課題に直面します。
デスバレーの克服
スタートアップ企業はシード期からアーリーステージにかけて「デスバレー」と呼ばれる厳しい時期を迎えます。初期開発資金は確保できても、製品完成から市場浸透までの間は収益が限られる一方、開発継続や顧客獲得のための資金需要は増加します。
年商1億円未満のIT企業では、製品開発後の営業活動強化フェーズで月間500万円〜1000万円の運転資金が必要になるケースも珍しくありません。既存の資金が枯渇する前に、次の成長ステージへ移行するための資金調達が必要です。
売上と資金調達のタイミングギャップ
IT企業、特にBtoBサービスを提供する企業では、契約締結から入金までのサイクルが長期化する傾向があります。大手企業との取引では90日以上の入金サイクルも珍しくなく、成長期には売上は増加しても現金が不足するという「成長痛」に悩まされることがあります。
年商3000万円のあるスタートアップでは、四半期で1000万円の新規契約を獲得したものの、入金は3か月後となり、その間の開発継続や人材確保のための資金繰りに苦労した例もあります。
エクイティとデットのバランス
スタートアップの資金調達では、株式(エクイティ)と負債(デット)のバランスが重要です。VC投資のような株式資金調達は創業者の持分希薄化を伴います。一方で銀行融資などの負債は返済義務があり、創業間もない企業では審査が厳しいという課題があります。
最適な資本構成を実現するには、事業フェーズに合わせた多様な資金調達手段を組み合わせる戦略が重要です。
ファクタリングとベンチャーキャピタル投資の基本
まずはファクタリングとVC投資それぞれの特徴を理解しましょう。
ファクタリングの仕組みとメリット
ファクタリングは売掛金を早期に現金化するサービスです。まだ入金されていない売掛金をファクタリング会社に売却することで、入金を待たずに資金化できます。
例えば1000万円の売掛金があり、入金まで60日かかる場合、ファクタリングを利用すれば手数料(30万円〜50万円程度)を差し引いた金額を即日〜数日で受け取ることができます。
ファクタリングの主なメリットは以下の通りです。
資金化のスピードが速く、急な資金需要に対応できます。 銀行融資と異なり負債にならず、バランスシートが悪化しません。 審査は主に売掛先の信用力に基づくため、創業間もない企業でも利用しやすいです。 資金使途に制限がなく、柔軟に活用できます。
ベンチャーキャピタル投資の特徴
VC投資は成長可能性の高いスタートアップに対して株式投資を行い、将来の株式価値上昇による利益を目指す投資形態です。
例えば時価総額3億円のスタートアップに対して1億円を投資し、持分割合25%(投資後時価総額ベース)を取得するようなケースが一般的です。
VC投資の主な特徴は以下の通りです。
返済義務がなく、事業が失敗した場合も返済リスクを負いません。 資金規模が大きく、大型の成長投資が可能です。 VCのネットワークやノウハウも活用できるため、資金以外の価値も得られます。 一方で創業者の持分が希薄化し、場合によっては経営の自由度が制限されることがあります。
両者の相補的な関係
ファクタリングとVC投資は性質が大きく異なり、それぞれに長所と短所があります。これらを組み合わせることで、以下のような相乗効果が期待できます。
VC投資で長期的な成長資金を確保しつつ、ファクタリングで短期的な資金ニーズに対応できます。 ファクタリングによる資金効率化でVC資金の「燃焼率」を抑制し、次の資金調達までの期間を延ばせます。 ファクタリングを利用して売上成長を加速させることで、次回のVC資金調達時の企業価値向上につなげられます。
成功事例:ファクタリングとVC投資を組み合わせて急成長したアプリ開発企業A社
ここでは創業3年目、年商1億2000万円のアプリ開発企業A社の事例を紹介します。A社はクラウドベースの業務効率化アプリを開発し、中小企業向けに提供していました。
A社の資金調達課題
A社は創業期に創業者の自己資金とエンジェル投資家からの資金800万円で開発をスタートし、サービスローンチ後1年で年商6000万円まで成長していました。しかし、さらなる成長に向けて以下の課題を抱えていました。
大手企業からの引き合いが増加し、エンタープライズ向け機能の開発が急務でしたが、開発には約6か月、1億円程度の投資が必要でした。
大手企業との契約が増える一方で、入金サイクルが60〜90日と長期化し、月次のキャッシュフローが悪化していました。売掛金残高は常時4000万円程度あり、その資金が固定化されている状態でした。
銀行融資は創業間もないこともあり、審査が厳しく十分な融資枠を得られませんでした。既存の融資枠は1500万円で、ほぼ上限まで使用していました。
ファクタリングの導入と効果
A社は資金繰り改善のためにファクタリングの導入を決断しました。IT業界に特化したファクタリング会社B社と契約し、大手企業向けの売掛金を中心にファクタリングを利用し始めました。
具体的には月間発生する売掛金のうち、特に入金サイクルが長い大手3社向けの売掛金(月平均1500万円)をファクタリングしました。手数料率は月2.5%(年率換算30%)と銀行融資と比較すると高めでしたが、即時の資金化によるメリットを重視しました。
ファクタリング導入後の効果は以下の通りです。
売掛金の固定化が解消され、月次キャッシュフローが安定しました。従来は月末に資金ショートのリスクがありましたが、安定的な運転資金が確保できるようになりました。
安定した資金で2名の追加開発者を採用でき、エンタープライズ向け機能の一部開発に着手できました。これにより大手顧客からの信頼獲得にもつながりました。
資金繰りに余裕ができたことで、経営陣は事業戦略や資金調達活動に集中できるようになりました。以前は日々の資金繰りに追われる状況でした。
ベンチャーキャピタル投資の獲得プロセス
ファクタリングで資金繰りを安定させながら、A社は並行してVC投資の獲得に向けた活動を進めました。創業者は3か月間で15社以上のVCとミーティングを重ね、最終的にIT特化型のベンチャーキャピタルC社からの投資を獲得しました。
C社の投資条件は以下の通りでした。
投資額:1億2000万円 バリュエーション(投資前):3億6000万円 株式取得率:25%(投資後ベース) 取締役席:1席
投資決定の主な理由は以下の点でした。
エンタープライズ向け市場への展開計画が明確で、既に大手顧客との取引実績があった。 ファクタリングを活用し、限られた資金で効率的に事業成長させてきた資金管理能力が評価された。 直近6か月の月次売上が右肩上がりで、前年比180%の成長を実現していた。
ファクタリングとVC投資組み合わせ後の成長加速
VC投資獲得後もA社はファクタリングの利用を継続し、両者を組み合わせた資金戦略を展開しました。具体的には以下のような活用方法です。
VC資金は主に中長期的な成長投資(エンタープライズ向け機能の本格開発、マーケティング体制構築、海外展開準備など)に充当しました。
一方、日々の運転資金や短期的な資金需要にはファクタリングを活用し続けました。売上増加に伴い売掛金も増加していたため、ファクタリングの活用枠も拡大していきました。
VC投資後1年間で以下のような成果が得られました。
年商が1億2000万円から3億8000万円へと3倍以上に成長 従業員数が15名から42名に増加 大手企業との取引が3社から12社に拡大 北米市場への展開を開始
ファクタリングとVC投資を組み合わせた資金戦略により、A社は「成長のための投資」と「日々の資金繰り」を両立させることに成功しました。
組み合わせ戦略の実践ポイント
A社の事例から、ファクタリングとVC投資を効果的に組み合わせるポイントが見えてきます。
適切なタイミングと順序
多くの場合、まずファクタリングを導入して資金繰りを安定させ、その上でVC投資獲得を目指すという順序が効果的です。理由は以下の通りです。
資金繰りが安定していると、VC交渉において「資金が尽きる前に契約しなければ」という焦りが軽減され、より有利な条件を引き出せる可能性が高まります。
安定したキャッシュフローは企業価値評価にもプラスに働きます。特にSaaSなど月次の売上推移が重視されるビジネスモデルでは、ファクタリングによる売上成長の加速が企業価値向上につながります。
A社の場合、ファクタリング導入から約4か月後にVC投資を獲得しました。この期間にファクタリングを活用して新規顧客獲得や開発を進めたことが、より高いバリュエーションでの資金調達につながりました。
VC投資家への説明と理解
ファクタリングの利用をVC投資家に適切に説明し理解を得ることが重要です。以下のポイントを意識しましょう。
ファクタリングは資金効率を高めるための戦略的な選択であることを説明します。単なる資金繰り改善手段ではなく、成長投資を効率化するツールとして位置づけます。
コスト対効果を明確に示します。例えばファクタリングのコスト(手数料)と、それによって実現できた売上増加や機会獲得の効果を数値で示すことが有効です。
A社は投資家プレゼンテーションにおいて「ファクタリングの活用で売掛金を固定化せず、成長投資に回転させることで、限られた資金から最大の成長を引き出してきた」と説明し、資金効率への意識の高さをアピールしました。
資金使途の最適化
ファクタリングとVC投資を組み合わせる際は、それぞれの特性に合わせた資金使途の最適化が重要です。
VC資金(エクイティ資金)は主に以下の用途に活用するのが効果的です。
- 研究開発や製品機能拡充など長期的なリターンが期待できる投資
- 優秀な人材確保や組織体制構築など基盤強化のための投資
- 市場拡大やブランディングなど企業価値向上につながる投資
一方、ファクタリングで得た資金は主に以下の用途に適しています。
- 日々の運転資金や短期的な資金需要への対応
- 受注増加に伴う一時的なリソース確保
- 緊急の機会に対応するための資金
A社はVC資金を製品開発やグローバル展開などの長期的投資に充て、ファクタリング資金を人材採用や日々の運転資金に活用するという明確な役割分担を行いました。
資金調達手段としてのファクタリングとVCの比較
ファクタリングとVC投資は性質が大きく異なります。それぞれの特徴を比較し、適切な使い分けを考えましょう。
コストとリターンの違い
ファクタリングは売掛金を少し割り引いて即時現金化するサービスのため、手数料というコストが発生します。月利2%〜4%程度が一般的で、年率換算すると24%〜48%となります。一方で返済義務はなく、売掛金の回収リスクはファクタリング会社が負担します。
VC投資は返済義務はないものの、株式の一部をVCに譲渡するため、将来の会社価値上昇分の一部をVCに渡すことになります。また、経営の自由度が一部制限される可能性もあります。
A社の場合、ファクタリングで年間約900万円の手数料を支払う一方、VC投資では会社の25%の株式を譲渡しました。これは将来のEXITで大きなコストとなる可能性がありますが、成長加速のために必要な選択でした。
利用のタイミングと適した状況
ファクタリングは既に売掛金が発生している(つまり売上が立っている)状況で利用できます。シード期からレイターステージまで、売上があれば幅広いフェーズで活用可能です。
VC投資は主にシード期からミドルステージの成長企業を対象としています。特に市場拡大や急成長フェーズでの大型資金調達に適しています。
A社のように、ある程度の売上実績があり、さらなる成長のための投資資金が必要なアーリーステージ〜ミドルステージのスタートアップにとって、両者の組み合わせは特に有効です。
審査基準と獲得難易度の違い
ファクタリングの審査は主に売掛先企業の信用力が重視されます。ベンチャー企業自体の信用力よりも、取引先の支払い能力が評価ポイントになるため、大手企業との取引があれば比較的利用しやすいという特徴があります。
一方、VC投資の審査はビジネスモデルの将来性、市場規模、チームの能力、競合優位性など多角的な評価が行われます。統計的には投資検討案件の1%〜3%程度しか投資に至らないと言われており、ハードルは高いです。
A社の場合、大手企業との取引実績があったためファクタリングの審査は比較的スムーズでした。一方、VC投資は15社以上との交渉の末、最終的に1社からの投資を獲得するという厳しいプロセスでした。
実践上の注意点
ファクタリングとVC投資を組み合わせる際の注意点も押さえておきましょう。
ファクタリングのコスト管理
ファクタリングは便利な資金化手段ですが、手数料コストが高いのが特徴です。以下のような対策が重要です。
利用額と頻度の最適化:すべての売掛金をファクタリングするのではなく、必要な範囲に限定することでコストを抑制できます。
手数料交渉:取引実績を積み重ねることで、手数料率の引き下げ交渉が可能になることもあります。
A社は当初すべての売掛金をファクタリングしていましたが、段階的に対象を厳選し、最終的には大手企業向けの売掛金のみをファクタリングすることでコスト削減を実現しました。また取引実績を重ねることで、当初月2.5%だった手数料率を1.8%まで引き下げることにも成功しています。
VC投資家との関係構築
VC投資を受ける際は、単なる資金提供者ではなく、ビジネスパートナーとしての関係構築が重要です。
定期的な情報共有:月次や四半期ごとの業績報告や戦略会議を通じて、信頼関係を構築します。
ファクタリング利用の透明性:ファクタリングの利用状況や効果についても明確に報告し、理解を得ることが重要です。
A社はVC投資獲得後も、月次の取締役会でファクタリングの利用状況と効果を報告していました。その結果、当初はコスト面で懸念を示していたVC側も、成長加速効果を理解し、継続利用を支持するようになりました。
出口戦略の検討
ファクタリングとVC投資を組み合わせた資金調達は、将来的な「出口」も見据えた戦略が重要です。
ファクタリングからの段階的な移行:成長に伴い、ファクタリングから銀行融資など低コストの資金調達へ段階的に移行する計画を持つことが理想的です。
株式価値最大化:VC投資家の出口(IPOやM&A)を見据え、企業価値を最大化するための成長戦略を実行します。
A社はVC投資獲得後2年間の成長計画において、売上3億円達成時点で銀行からの運転資金融資枠確保を目指し、ファクタリング依存度を下げる計画を立てていました。同時に5年以内のIPOを目指した成長戦略も推進していました。
スタートアップ企業の資金調達では、エクイティとデット、短期と長期など、様々な観点でバランスのとれた資金調達ミックスが重要です。ファクタリングとVC投資の組み合わせは、「成長のための資金」と「日々の運転資金」を両立させる効果的な戦略といえるでしょう。自社の成長フェーズや資金需要に合わせて最適な組み合わせを検討してみてください。

