創業3年目の建設会社がファクタリングで乗り切った資金危機

建設業界向け

建設業界では工事完了から入金までの期間が長く、創業間もない企業にとって資金繰りは大きな課題です。特に受注が増えてきた成長フェーズでは、皮肉にも売上増加が資金危機を招くことも少なくありません。本記事では、創業3年目で大型案件の受注により資金危機に陥ったある建設会社が、ファクタリングを活用して危機を乗り越え、さらなる成長へとつながった実例を紹介します。

社長
社長

創業して3年目になるんだが、仕事は順調に増えてきたものの、資金繰りがますます厳しくなってきてね。大きな案件も取れるようになったけど、材料費や人件費の支払いが先行して、売掛金の回収までの期間が長くて…このままでは成長のチャンスを逃してしまいそうなんだ。

アドバイザー
アドバイザー

創業期の建設会社にとって、その壁は本当に高いですよね。銀行からの融資も限定的で、成長と資金繰りのジレンマに悩まれる方は多いです。

社長
社長

そうなんだよ。何か良い打開策はないものかと考えているところなんだ。同じような状況を乗り越えた事例なんかがあれば、ぜひ知りたいね。

アドバイザー
アドバイザー

実は、まさに同じ創業3年目の建設会社がファクタリングを活用して、その厳しい状況を見事に乗り切った事例があるんですよ。この記事では、その会社がどのようにファクタリングを戦略的に活用して、資金繰りの改善だけでなく、事業の急成長まで実現したのか、具体的な方法と成果を詳しく紹介しています。

社長
社長

おお!それは参考になりそうだな。どんな工夫があったのか、ぜひ知りたいよ。

創業3年目の建設会社が直面した資金危機

西日本を拠点に活動する「松倉建設」(仮称)は個人住宅のリフォームや小規模店舗の内装工事を主な事業として創業しました。順調に案件を積み重ね、3年目に大型案件を受注したことで転機を迎えます。

順調な成長から突然の資金危機へ

松倉建設は32歳の松倉社長(仮名)が前職のゼネコンでの経験を活かして創業した会社です。創業時は松倉社長と職人2名の小規模なスタートでしたが、丁寧な仕事と納期厳守の姿勢が評価され、順調に実績を積み重ねていきました。

創業2年目には年商6,000万円に達し、従業員も6名に増加。地元での評判も高まり、3年目に入ると地域の中堅スーパーマーケットチェーンから大きな話が舞い込みました。5店舗の改装工事(総額2,500万円)を一括で受注できることになったのです。

松倉社長は「会社の飛躍のチャンス」と考え、この案件を受注。しかし工事が始まって間もなく、深刻な資金繰りの問題に直面することになりました。

工事は2か月間で5店舗を順次改装するスケジュールで、支払条件は「全店舗完工後、60日後の一括払い」。つまり最初の工事着手から入金までは最長で4か月の期間があることになります。

必要な資材費1,000万円、外注費800万円、人件費300万円など、合計2,100万円の支出が先行して必要でした。当時の松倉建設の預金残高は800万円程度。不足する1,300万円をどう捻出するかが大きな課題となったのです。

創業間もない企業の資金調達の壁

資金不足に気づいた松倉社長は、まず取引銀行に融資を申し込みました。しかし創業3年未満の企業への融資審査は厳しく、「財務基盤がまだ弱い」「大型案件の実績が少ない」などの理由で、希望額の融資は得られませんでした。結果として500万円の融資枠しか確保できず、依然として800万円の資金が不足している状態でした。

「発注者に前払金を相談しよう」と考えた松倉社長でしたが、発注条件として「前払金なし」が明記されており、交渉の余地はありませんでした。

資材業者に支払いサイクルの延長を相談しましたが、松倉建設はまだ取引実績が少なく、「現金払いか、せいぜい翌月末払い」という回答。外注業者も同様の状況でした。

このままでは工事途中で資金が尽き、最悪の場合は工事の中断や遅延につながりかねません。松倉社長は「成長のチャンスが会社存続の危機に変わってしまう」と焦りを感じ始めていました。

救いの手としてのファクタリングとの出会い

切羽詰まった状況の中、松倉社長はファクタリングという選択肢と出会います。

経営セミナーで知ったファクタリングという選択肢

松倉社長が地元の商工会議所が主催する「中小建設業の資金繰り改善セミナー」に参加したのは、最初の店舗工事が始まって間もない頃でした。このセミナーで講師を務めていた中小企業診断士から「建設業界での資金繰り改善策としてファクタリングが注目されている」という話を聞いたのです。

「ファクタリングとは売掛金を早期に現金化するサービスで、銀行融資と異なり創業年数や財務状況よりも、取引先(発注者)の信用力と工事契約の確実性が重視される」という説明に、松倉社長は一筋の光を見出しました。

セミナー後、その中小企業診断士に個別相談し、ファクタリングについて詳しく教えてもらいました。「大手スーパーチェーンとの契約であれば、ファクタリング会社の審査は通りやすいだろう」というアドバイスを受け、早速複数のファクタリング会社に問い合わせることにしました。

ファクタリング会社との交渉と選定

松倉社長は3社のファクタリング会社から見積もりを取得し、慎重に比較検討しました。各社から提示された条件は以下の通りでした。

A社:手数料率9%、審査期間3営業日、必要書類は契約書と請求書のみ B社:手数料率7.5%、審査期間5営業日、工事の進捗確認が必要 C社:手数料率8%、審査期間3営業日、出来高80%以上で資金化可能

松倉社長は単に手数料の安さだけでなく、スピードと柔軟性を重視。特に「出来高ベースでの資金化が可能か」という点を重要視しました。なぜなら全店舗の完工を待たずに、完了した店舗分から順次資金化できれば、資金繰りの改善効果が大きいからです。

最終的にC社を選定した松倉社長。決め手となったのは「出来高80%以上で資金化可能」という条件と、C社担当者の「建設業界の商習慣を理解している」という姿勢でした。C社の担当者は「追加工事が発生した場合の対応」「検収遅延時のリスク」など、建設業特有の状況についても具体的なアドバイスをくれたのです。

ファクタリングを活用した資金危機脱出作戦

松倉建設はどのようにファクタリングを活用して資金危機を乗り切ったのでしょうか。具体的な取り組みを見ていきます。

段階的な出来高ファクタリングの実施

松倉建設が採用したのは「出来高ファクタリング」という方法でした。全5店舗の工事完了を待たずに、完了した店舗から順次資金化していくという戦略です。

最初の2店舗が完了した時点(全体の約40%の出来高)で、その部分についてファクタリングを申し込みました。契約金額2,500万円の40%である1,000万円に対して、手数料8%(80万円)を差し引いた920万円が3営業日後に入金されました。

この資金により、3店舗目と4店舗目の資材費と外注費の支払いをカバー。さらに3店舗目と4店舗目が完了した時点(全体の約80%の出来高)で、追加で1,000万円のファクタリングを実施。手数料80万円を差し引いた920万円が入金され、最後の店舗の工事資金と人件費の支払いに充てることができました。

最終的に全店舗の工事は予定通りのスケジュールで完了。工事完了から60日後に発注元から2,500万円が入金され、そのうち500万円をファクタリング会社への返済に充て、残りを次の案件のための資金として確保することができました。

ファクタリング活用の効果と成果

ファクタリングの活用により、松倉建設は以下のような効果を得ることができました。

資金ショートを回避し、予定通りの工事進行が実現しました。これにより発注元からの信頼を獲得し、追加の改装工事(2店舗、1,000万円)の受注にもつながりました。

資材業者や外注業者への支払いを遅延なく行えたことで、良好な取引関係を維持。次の案件でも協力を得られる基盤を築くことができました。

社員の給与や社会保険料の支払いも滞りなく行えたため、社内の不安を解消し、モチベーションを維持することができました。

手数料として合計160万円(全体の約6.4%)のコストがかかりましたが、工事を予定通り完了させることで得られた信頼と追加受注の価値を考えれば、十分に見合う投資だったと松倉社長は評価しています。

ファクタリング活用を通じて学んだ教訓

資金危機を乗り越えた経験から、松倉社長はどのような教訓を得たのでしょうか。この経験が今後の経営にどのように活かされているかを見ていきます。

創業期の資金計画の重要性

この経験を通じて、松倉社長は創業期における資金計画の重要性を痛感しました。特に以下の点が重要だと認識するようになりました。

受注規模と自社の資金力のバランスを常に意識することが重要です。案件の規模だけでなく、支払条件や工期も含めた総合的な判断が必要だと学びました。

「売上=利益」ではなく「キャッシュフロー」の視点で経営判断することの大切さを実感。特に成長期は売上が増えても、それに伴い資金需要も増大するため、キャッシュフロー管理が重要だと理解しました。

複数の資金調達手段を持つことの重要性も認識。銀行融資だけでなく、ファクタリングなど状況に応じた資金調達手段を複数確保しておくことで、資金繰りの柔軟性が高まると学びました。

コスト意識と適切なファクタリング活用

ファクタリングは有効な資金調達手段である一方、手数料コストも無視できません。松倉社長はこの経験から、ファクタリングを適切に活用するための以下のポイントを学びました。

全案件にファクタリングを使うのではなく、「いつ」「どの案件に」利用するかを見極めることが重要です。特に資金需要が集中する大型案件や、支払いサイクルが長い案件に絞って利用すると費用対効果が高まります。

ファクタリング会社の選定は手数料だけでなく、建設業への理解度や柔軟性も重要な基準です。「出来高ファクタリング」に対応しているか、追加工事や工期延長などのリスクにどう対応するかなど、建設業特有の状況への対応力を確認することが大切です。

継続的な取引関係を構築することで、手数料率の交渉や条件改善が可能になります。実際に松倉建設では、2回目以降のファクタリング利用で手数料率を8%から7%に引き下げることに成功しました。

その後の成長と資金調達戦略の進化

資金危機を乗り越えた松倉建設は、その後どのように成長し、資金調達戦略をどう進化させていったのでしょうか。

安定成長と財務基盤の強化

大型案件を無事に完遂した松倉建設は、発注元からの信頼を獲得し、継続的な取引につながりました。これを足掛かりに、他の商業施設からの受注も増加。創業3年目の年商は1億2,000万円に達し、従業員も10名に増加しました。

財務面では、利益の一部を内部留保に回し、自己資本比率の向上に努めました。創業3年目終了時点で自己資本比率は15%から25%に向上。これにより銀行からの評価も徐々に高まり、運転資金の融資枠も拡大しました。

松倉社長は「急成長よりも安定成長」を経営方針とし、受注規模と自社の資金力・施工能力のバランスを常に意識するようになりました。具体的には月間の施工金額の上限を設定し、それを超える案件は協力会社との連携や工期の調整で対応するなど、計画的な経営を心がけています。

複合的な資金調達戦略の構築

ファクタリングの経験を活かし、松倉建設はより洗練された資金調達戦略を構築していきました。

銀行融資とファクタリングの使い分けを明確にしました。設備投資や長期的な運転資金は銀行融資、短期的な資金需要や大型案件の資金化にはファクタリングと、目的に応じた使い分けを徹底しています。

発注元との交渉力も向上しました。実績を積み重ねたことで信頼関係が構築され、「出来高30%時点での中間金支払い」といった条件交渉が可能になりました。これにより一部の案件ではファクタリングの必要性が減少しています。

複数のファクタリング会社との関係構築も進めました。現在は3社と取引があり、案件の特性に応じて最適な会社を選定しています。例えば「急ぎの資金化が必要な案件」「大型の公共工事」など、案件ごとに使い分けることでコスト最適化を図っています。

創業期の建設会社が資金危機を乗り越えるためのアドバイス

松倉建設の経験から、創業間もない建設会社が資金危機を回避するためのアドバイスをまとめます。

予防的な対策の重要性

資金危機に陥る前に、以下のような予防的な対策を講じることが重要です。

受注判断の際の資金シミュレーションを徹底しましょう。案件の受注を検討する際は、「必要な先行投資額」「資金回収までの期間」「自社の手元資金」を考慮した資金シミュレーションを行い、無理のない受注判断をすることが重要です。

複数の資金調達手段を事前に確保しておくことも大切です。銀行融資だけでなく、ファクタリング会社との関係構築や、資材業者との支払条件交渉など、複数の選択肢を持っておくことで、いざという時の対応力が高まります。

施工管理と進捗管理の徹底も資金計画には欠かせません。工事の遅延は支払いスケジュールにも影響するため、適切な進捗管理と問題の早期発見・対応が資金リスクの軽減につながります。

ファクタリングを効果的に活用するコツ

資金危機に直面した際、ファクタリングを効果的に活用するコツとして以下のポイントが挙げられます。

早めの相談と準備が重要です。資金不足が見込まれる場合は、ギリギリになってからではなく、早めにファクタリング会社に相談しましょう。審査や契約には時間がかかることもあるため、余裕を持った準備が大切です。

必要書類の準備も念入りに行いましょう。特に「工事請負契約書」「発注書」「工程表」「出来高確認書」などの書類は審査の重要な材料となります。不備があると審査が遅れる原因になるため、事前に確認しておくことが重要です。

ファクタリング会社との率直なコミュニケーションも大切です。建設業特有のリスク(工期延長の可能性や追加工事の発生など)についても隠さず伝え、対応策を一緒に考えてもらうことで、信頼関係の構築と円滑な取引につながります。

松倉建設の事例からも分かるように、ファクタリングは創業間もない建設会社が資金危機を乗り越えるための有効なツールです。しかし手数料コストもかかるため、「いつ」「どのように」活用するかを戦略的に考えることが重要です。受注判断の段階から資金計画を意識し、必要に応じてファクタリングも選択肢に入れた複合的な資金調達戦略を構築することで、創業期の難しい局面を乗り越えることができるでしょう。

松倉社長は「ファクタリングがなければ、あの大型案件は受けられなかっただろうし、会社の成長も今とは違っていたと思う」と振り返ります。資金調達の選択肢を広げることは、創業期の建設会社にとって成長の可能性を広げることにもつながるのです。


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