建設業経理担当者が知っておくべきファクタリングの会計処理

建設業界向け
社長
社長

最近、工事代金の入金が遅くて資金繰りが厳しいんだよ。下請けへの支払いは待ってもらえないし、何か良い方法はないかな?

アドバイザー
アドバイザー

そういった建設業特有の資金繰り問題には『ファクタリング』という方法が効果的ですよ。工事の請求書を売却して即日資金化できるんです。

社長
社長

ファクタリング?聞いたことはあるけど、建設業でも使えるの?審査が厳しそうだし、手続きも複雑そうだけど…

アドバイザー
アドバイザー

建設業向けの専門サービスもありますよ。この記事では、建設業経理担当者が知っておくべきファクタリングの選び方やメリット・デメリット、注意点まで詳しく解説しています。資金繰り改善に役立つ情報が満載ですよ!

ファクタリングは売掛金を早期に現金化できる資金調達手法として、建設業界でも活用が広がっています。特に長期にわたる工事代金の回収サイクルや季節変動による資金繰りの課題を抱える建設会社にとって、有効な選択肢となっています。しかし、ファクタリングを利用する際の会計処理は一般的な売掛金回収とは異なる点があり、経理担当者には適切な処理が求められます。本記事では、建設業の経理担当者が知っておくべきファクタリングの会計処理について、具体的な事例とともに解説します。

ファクタリングの基本的な仕組みと会計上の位置づけ

まずはファクタリングの基本的な仕組みと、会計上どのように位置づけられるのかを確認しましょう。

建設業におけるファクタリングの種類と特徴

建設業で利用されるファクタリングには、主に以下の2種類があります。

2社間ファクタリング(ノンノーティファクタリングとも呼ばれます)は、建設会社とファクタリング会社の間だけで取引が完結するタイプです。発注者(債務者)に知られることなく利用できる特徴があります。建設業界では元請との関係維持を重視するケースが多く、この形態が好まれることもあります。

3社間ファクタリング(ノーティファクタリングとも呼ばれます)は、債権譲渡の通知を発注者に行い、発注者は直接ファクタリング会社に支払いを行う形態です。手数料が2社間より安い傾向にありますが、発注者との関係性に配慮が必要です。

また、償還請求権の有無による分類もあります。

リコース型(償還請求権あり):発注者が支払わない場合、ファクタリング会社から建設会社に返還請求がくるタイプ ノンリコース型(償還請求権なし):発注者の支払いリスクをファクタリング会社が負うタイプ

これらの違いは会計処理にも影響するため、契約内容を正確に把握しておくことが重要です。

会計上の基本的な考え方

ファクタリングの会計処理を考える上で、最も重要なポイントは「売掛金(完成工事未収入金)の売却」と「借入金」のどちらとして扱うかという点です。

売却処理:債権の所有権や支払いリスクがファクタリング会社に移転する場合(特にノンリコース型)は、売掛金を売却したと考えて売却処理を行います。

金融取引処理:債権の所有権が実質的に建設会社に残る場合や、返還請求権がある場合(リコース型)は、担保付借入金として処理することが一般的です。

「中小企業の会計に関する指針」では、金融資産の認識の中止(売却処理)の要件として「金融資産の契約上の権利を行使したとき、権利を喪失したとき、または権利に対する支配が他に移転したとき」と定めています。ファクタリングがこの要件を満たすかどうかで処理が変わってきます。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの会計処理

ファクタリングの形態によって会計処理が異なります。ここでは具体的な仕訳例で見ていきましょう。

2社間ファクタリング(ノンリコース型)の会計処理

2社間ファクタリングでノンリコース型の場合、売掛金の売却として処理するのが一般的です。

例えば、年商3億円の建設会社「大和建設」(仮称)が、商業施設建設工事(1,000万円)の完成工事未収入金をファクタリングで売却したケースを考えてみましょう。ファクタリング会社の手数料は8%(80万円)とします。

(借方)現金預金     9,200,000円  (貸方)完成工事未収入金 10,000,000円

(借方)支払手数料    800,000円

ここで「支払手数料」は販売費及び一般管理費として計上します。ファクタリング手数料は資金調達コストとして「支払利息」で処理するケースもありますが、債権売却に伴う費用であるため「支払手数料」とするのが一般的です。

なお、貸借対照表からは完成工事未収入金が減少し、キャッシュフロー計算書では営業活動によるキャッシュフローが増加します。

3社間ファクタリング(リコース型)の会計処理

3社間ファクタリングでリコース型(償還請求権あり)の場合は、担保付借入金として処理することが適切です。

同じく大和建設が公共施設工事(1,500万円)の完成工事未収入金に対して、手数料6%(90万円)でリコース型ファクタリングを利用した場合の仕訳は以下のようになります。

(借方)現金預金     14,100,000円  (貸方)短期借入金   15,000,000円

(借方)支払利息       900,000円

この場合、完成工事未収入金は貸借対照表に残り、同時に短期借入金も計上されます。そして発注者からの入金があった時点で以下の仕訳を行います。

(借方)短期借入金    15,000,000円  (貸方)完成工事未収入金 15,000,000円

キャッシュフロー計算書では、ファクタリングによる入金は財務活動によるキャッシュフロー(借入れによる収入)として計上されます。

建設業特有の会計処理上の注意点

建設業界特有の事情に関連した会計処理上の注意点をいくつか見ていきましょう。

出来高払いや部分払いの場合の会計処理

建設業では工事の進行に応じて、出来高払いや部分払いを受ける契約も一般的です。このような場合のファクタリング処理には注意が必要です。

例えば、大和建設が総額5,000万円の工事を請け負い、出来高60%時点で3,000万円の部分請求を行い、この部分請求分をファクタリングする場合を考えてみましょう。

まず、出来高に応じた収益認識と部分請求の処理を行います。工事進行基準を採用している場合:

(借方)完成工事未収入金  30,000,000円  (貸方)完成工事高   30,000,000円

次に、この完成工事未収入金をノンリコース型ファクタリングで売却(手数料7%、210万円)した場合:

(借方)現金預金      27,900,000円  (貸方)完成工事未収入金 30,000,000円

(借方)支払手数料     2,100,000円

このケースで注意すべき点は、残りの工事部分(40%)に関する収益認識との整合性です。工事進行基準を採用している場合は、出来高の進捗に応じて収益を認識するため、ファクタリングと収益認識のタイミングを適切に管理する必要があります。

追加工事や設計変更があった場合の処理

建設業では当初契約になかった追加工事や設計変更が発生することも少なくありません。既にファクタリングを利用している場合の追加工事の処理は、契約内容によって異なります。

例えば、当初契約3,000万円の工事をファクタリングした後に、500万円の追加工事が発生したケースを考えてみましょう。

追加工事分を別契約として扱う場合は、新たな完成工事未収入金として計上し、必要に応じて別途ファクタリングを検討します。

一方、追加工事を含めて一体の契約として扱う場合は、既存のファクタリング契約との関係を確認する必要があります。ファクタリング契約に「追加工事分も対象となる」旨の条項があれば、追加分についても同様の処理を行います。

このような複雑なケースでは、ファクタリング会社との契約内容を確認し、必要に応じて顧問税理士や会計士に相談することをお勧めします。

ファクタリング手数料の適切な処理方法

ファクタリング手数料の会計処理は、ファクタリングの性質によって異なります。適切な処理方法を確認しましょう。

手数料の計上区分と勘定科目

ファクタリング手数料の計上区分と勘定科目については、以下のような考え方があります。

売却処理の場合(ノンリコース型):債権売却に伴うコストとして「支払手数料」(販売費及び一般管理費)として計上するのが一般的です。

金融取引処理の場合(リコース型):資金調達コストとして「支払利息」(営業外費用)として計上します。

ただし、実務上は会社の会計方針によって処理が異なる場合もあります。重要なのは、選択した処理方法を継続的に適用することです。

例えば、東日本を中心に公共工事を手がける「東栄建設」(仮称、年商4億円)では、毎月のように複数のファクタリングを利用しています。同社ではノンリコース型の2社間ファクタリングを主に利用し、手数料を「支払手数料」として一括計上していましたが、顧問税理士からのアドバイスにより、年間の手数料総額が1,000万円を超えたことから財務インパクトを考慮して「支払利息」に変更しました。このように、金額的重要性も考慮して処理方法を選択することもあります。

税務上の取り扱いと注意点

ファクタリング手数料の税務上の取り扱いについても確認しておきましょう。

ファクタリング手数料は原則として、発生した事業年度の損金として認められます。ただし、法人税法上は「売上割引」と「支払利息」では取り扱いが異なる場合があるため、税務処理の一貫性に注意が必要です。

また、消費税の取り扱いについては、ファクタリング手数料は金融取引に関する手数料として、原則非課税取引となります。ただし、契約内容によっては事務手数料部分が課税取引となる場合もあるため、契約書の内容を確認しましょう。

西日本の中堅建設会社「広和建設」(仮称、年商7億円)では、ファクタリング契約書に「手数料」と「事務手数料」が別々に記載されていたケースがありました。顧問税理士の確認により、「手数料」は非課税、「事務手数料」は課税と区分処理することで、適切な消費税処理を行いました。

財務諸表への影響と開示方法

ファクタリングの利用は財務諸表にどのような影響を与えるのでしょうか。適切な開示方法も含めて確認しましょう。

貸借対照表とキャッシュフロー計算書への影響

ファクタリングの会計処理によって、財務諸表への影響は大きく異なります。

売却処理の場合:

  • 貸借対照表:完成工事未収入金が減少し、現金預金が増加(手数料分は減)
  • キャッシュフロー計算書:営業活動によるキャッシュフローが増加

金融取引処理の場合:

  • 貸借対照表:完成工事未収入金はそのまま。同時に短期借入金が増加し、現金預金も増加(手数料分は減)
  • キャッシュフロー計算書:財務活動によるキャッシュフローが増加

特に建設業では受注工事高に対する完成工事未収入金の割合(売上債権回転率)が業績評価の指標となることも多いため、ファクタリングによる売却処理は財務指標に好影響を与える可能性があります。

関西の建設会社「大阪建設」(仮称、年商5億円)では、決算期末に1億円の完成工事未収入金をファクタリングで売却処理したことで、売上債権回転率が1.8回から2.4回に改善。金融機関からの評価が向上し、翌期の融資条件の改善につながった事例があります。

注記事項と適切な開示

ファクタリングを利用している場合、適切な開示も重要です。特に金額的重要性が高い場合や、継続的に利用している場合は、注記事項として開示することが望ましいでしょう。

重要な会計方針として、ファクタリング取引の処理方法(売却処理か金融取引処理か)を記載します。

また、決算日現在でファクタリングを利用している債権額が多額である場合は、追加情報として注記することも検討すべきです。

北海道の「北海建設」(仮称、年商3億5千万円)では、決算書の注記事項に「当社は資金調達の一環として、売掛債権のファクタリングを行っております。これらの取引は売却処理を適用しており、当期末時点での売却債権残高は8,500万円です」と記載しています。このような開示は、財務諸表利用者に対する適切な情報提供となります。

建設業における効果的なファクタリング会計の実践事例

実際の建設会社がどのようにファクタリングを活用し、会計処理を行っているのか、具体的な事例を見ていきましょう。

季節変動対応と会計処理の工夫

東北地方の「東北建設」(仮称、年商4億円)は、冬季の除雪工事と夏季の道路工事が主力事業ですが、季節による売上の変動が大きく、資金繰りに課題を抱えていました。

同社では季節変動に対応するため、以下のような会計処理を工夫しています。

繁忙期(冬季)の除雪工事代金は、3月末決算前にファクタリングで資金化し、閑散期(4〜5月)の運転資金に充てる戦略を採用。この際、ファクタリング手数料(年間約500万円)を月別の工事原価に配賦することで、各期間の収益性を正確に把握する工夫をしています。

具体的には、1〜3月の除雪工事(合計1億円)に対するファクタリング手数料(700万円)を、工事額に比例して各月の工事原価に配賦。これにより、「除雪工事は収益性が高いが、資金化のためのコストも考慮すると実質的な利益率は○%」という分析が可能になりました。

財務改善に向けた戦略的会計処理

関東の「関東建設」(仮称、年商6億円)では、銀行融資の条件改善のためにファクタリングを戦略的に活用しています。

同社では決算期末(9月末)に一時的に完成工事未収入金が増加する傾向があり、これが財務指標を悪化させる要因となっていました。そこで9月に完了する大型工事(通常3〜4件、合計約1億5千万円)については積極的にファクタリングを活用し、売却処理を適用することで財務体質の改善を図っています。

この戦略により、売上債権回転率の改善(1.5回→2.2回)、流動比率の向上(110%→150%)など、複数の財務指標が改善。結果として金融機関からの評価が向上し、借入金利の引き下げ(年0.3%減)に成功しました。

同社の財務担当者は「ファクタリング手数料は年間約900万円かかりますが、財務指標改善による金利減や与信枠拡大のメリットを含めると、トータルではプラスになっています」と評価しています。

経理担当者が押さえておくべきポイントとアドバイス

最後に、建設業の経理担当者がファクタリングの会計処理で押さえておくべきポイントをまとめます。

会計監査や税務調査でのチェックポイント

ファクタリングの会計処理は、会計監査や税務調査でもチェックされる可能性があります。以下の点に注意しましょう。

売却処理とするための要件(特にリスク移転の実態)を確認し、契約書の内容と会計処理が整合しているかをチェックします。特にリコース条項(償還請求権)の有無は重要なポイントです。

継続性の原則に従い、同種のファクタリング取引については同じ会計処理を継続的に適用しているかを確認します。処理方法を変更する場合は、正当な理由と適切な開示が必要です。

関連当事者間取引への注意も必要です。グループ会社間でのファクタリングや、役員が関与するファクタリング会社との取引は、通常の取引条件と著しく異なる場合、追加の開示や説明が求められることがあります。

効果的な管理と報告のためのアドバイス

最後に、ファクタリングを効果的に管理し、適切に報告するためのアドバイスをご紹介します。

ファクタリング専用の補助台帳を作成しましょう。どの工事の債権をいつ、いくらでファクタリングしたか、手数料はいくらだったかを記録しておくことで、後々の確認や分析が容易になります。

経営者への報告資料としては、ファクタリングのコスト(手数料)と効果(資金繰り改善、財務指標向上など)を対比した資料を準備すると効果的です。単なるコストとしてではなく、経営戦略の一環として評価してもらうことが重要です。

部門別や工事別の収益管理では、ファクタリング手数料をどの部門や工事に配賦するかのルールを明確にしておきましょう。例えば「どの工事の債権をファクタリングしたかで配賦する」「資金の使途に応じて配賦する」など、会社の状況に合わせたルール作りが大切です。

建設業においてファクタリングは有効な資金調達手段ですが、その会計処理は単純ではありません。適切な処理を行うことで財務諸表の透明性を確保するとともに、財務分析や経営判断に有用な情報を提供することができます。不明点がある場合は、顧問税理士や会計士に相談しながら、自社にとって最適な処理方法を検討していきましょう。


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