
大きな工事を受注したんだが、出来高払いでの契約になってしまった。工事は進めないといけないけど、資材代や人件費の支払いが先行して資金繰りが厳しいんだよね…

そういった状況でも、出来高払いの請求書を活用したファクタリングという方法があるんですよ。工事の進捗に応じた出来高部分の代金を早期に資金化できます。

出来高払いでもファクタリングが使えるの?でも進行中の工事だし、審査は通るのかな?それに手数料も気になるところだけど…

建設業の出来高払いに特化したファクタリングサービスもありますよ。この記事では、出来高払いとファクタリングの組み合わせ方、メリット・デメリット、選ぶ際のポイントまで詳しく解説しています。資金繰りの改善に役立つ情報が満載ですよ!
建設業界では工事完了から代金回収までの期間が長期にわたることが一般的で、資金繰りが大きな課題となっています。特に中小建設会社にとって、人件費や資材費などの先行支出と入金のタイムラグは経営を圧迫する要因となっています。その課題を解決する一つの方法として注目されているのが、「出来高払い」と「ファクタリング」の組み合わせです。本記事では、建設業における出来高払いとファクタリングの効果的な組み合わせ方法について、具体的な事例とともに解説します。
建設業の資金繰り課題と出来高払いの基本
まずは建設業界における資金繰りの課題と、出来高払いの基本的な仕組みについて理解しましょう。
建設業特有の資金サイクルと課題
建設業界では、工事着工から入金までの資金サイクルが非常に長いという特徴があります。例えば、年商3億円の中堅建設会社「匠建設」(仮称)では、以下のような資金サイクルが一般的でした。
工事請負契約締結(前払金が発生する場合あり) 材料調達、人員手配のための先行投資(工事金額の50〜70%) 工事施工期間(数週間〜数か月) 工事完了・検収 請求書発行 支払い期日(検収後30〜90日)
匠建設の社長である田中氏(仮名)によれば、「大型工事(5,000万円以上)の場合、工事着手から入金まで最短でも4か月、長いケースでは半年以上かかることも珍しくありません。その間、資材費や外注費、人件費などの支出が先行するため、常に資金繰りに悩まされています」とのことです。
さらに複数の工事が同時進行する場合や、季節要因で工事が集中する時期には、一時的に大きな資金需要が発生します。匠建設の場合、年間の資金需要は四半期ごとに大きく変動し、最盛期には運転資金として約8,000万円が必要でした。
出来高払いの仕組みとメリット
このような資金繰りの課題に対応するために、建設業界では「出来高払い」という方式が活用されています。出来高払いとは、工事の進捗に応じて段階的に代金を支払う方式です。
一般的な出来高払いの流れは以下の通りです。
工事請負契約時に出来高払いの条件(支払いタイミングや割合)を設定 工事の進捗に応じた出来高検査の実施 出来高確認書の発行(発注者の承認を得る) 部分的な請求書の発行 出来高部分の入金
匠建設では、大型工事(1億円の案件)において以下のような出来高払いの条件を設定していました。
着工時:前払金として20%(2,000万円) 30%進捗時:出来高払いとして工事額の20%(2,000万円) 60%進捗時:出来高払いとして工事額の20%(2,000万円) 工事完了時:残金の40%(4,000万円)
田中社長は「出来高払いを導入することで、工事途中での資金回収が可能になり、資金繰りが大幅に改善しました。特に長期工事では不可欠な条件となっています」と評価しています。
しかし、出来高払いにも課題があります。出来高検査から入金までにはやはり時間がかかること、また発注者側の事情で支払いが遅延するケースもあり、迅速な資金化が必要な場合には限界があります。そこで注目されているのが、出来高払いとファクタリングの組み合わせです。
出来高払いとファクタリングの組み合わせによる効果
出来高払いで発生した債権をファクタリングで早期に現金化することで、さらなる資金繰りの改善が可能になります。その具体的な効果を見ていきましょう。
出来高ファクタリングのメカニズム
出来高ファクタリングとは、工事の進捗に応じて発生した出来高払いの債権をファクタリングで早期に資金化する方法です。具体的な流れは以下の通りです。
工事の進捗に応じた出来高確認と出来高確認書の取得 出来高確認書に基づく請求書の発行 ファクタリング会社への申込み(出来高確認書と請求書を提出) ファクタリング会社による審査 債権買取契約の締結 資金の早期入金(通常3〜5営業日以内)
匠建設では、1億円の大型商業施設工事において、出来高60%時点での債権(2,000万円)をファクタリングで資金化しました。ファクタリング会社の手数料は7%(140万円)でしたが、約1,860万円を出来高確認後3日で資金化することができました。通常であれば出来高確認から入金まで45日かかっていたことを考えると、42日間の資金化前倒しが実現したことになります。
出来高ファクタリングのメリットと費用対効果
出来高ファクタリングの主なメリットは以下の通りです。
工事途中での早期資金化が可能になります。匠建設の場合、出来高60%の時点で部分払いの債権をファクタリングすることで、工事完了を待たずに必要な資金を確保できました。
複数工事の同時進行が容易になります。匠建設では、出来高ファクタリングで得た資金を他の工事の着工資金に充てることで、複数の大型案件を同時に進行させることが可能になりました。以前は資金的制約から時期をずらして工事を行っていましたが、出来高ファクタリングの活用により年間の受注件数が約20%増加しました。
季節変動への対応力が向上します。建設業では季節によって工事量や資金需要が変動することが一般的です。匠建設のある東北地方では冬季に除雪工事が集中しますが、出来高ファクタリングを活用することで冬季の資金需要ピーク時にも安定した資金繰りを実現しています。
ファクタリングには手数料というコストがかかりますが、その費用対効果は以下のように考えることができます。
匠建設の事例では、出来高債権2,000万円に対して手数料140万円(7%)が発生しました。一方、この資金を活用して新たな工事(3,000万円、利益率15%)に着手できたことで、約450万円の追加利益を獲得。手数料を差し引いても約310万円のプラスとなりました。
また、発注者によっては早期支払いの割引制度(例:30日以内の支払いで2%割引)を設けているケースもあります。ファクタリング手数料と早期支払い割引の差額を比較検討することも重要です。
出来高ファクタリングの実践的な活用方法
出来高ファクタリングを効果的に活用するための具体的な方法を、実例とともに見ていきましょう。
出来高確認のポイントと必要書類
出来高ファクタリングを成功させるためには、出来高確認のプロセスが極めて重要です。ファクタリング会社は出来高確認書を債権の根拠として重視するからです。
匠建設では、出来高確認の際に以下のような工夫をしています。
出来高査定の根拠資料を丁寧に準備します。具体的には、詳細な工程表(予定と実績の対比)、工種別の進捗率一覧、施工写真(日付入り)、資材搬入証明書などを体系的に整理しています。
出来高確認書には発注者の承認印を必ず取得します。担当者レベルではなく、決裁権限を持つ役職者の承認を得ることで、後のトラブルを防ぎます。
匠建設の工事部長である鈴木氏(仮名)は「出来高確認書は単なる形式ではなく、工事の質と進捗を証明する重要書類です。発注者との信頼関係を築くためにも、正確で透明性の高い出来高査定を心がけています」と強調します。
また、ファクタリング申込み時に必要な書類も事前に把握しておく必要があります。一般的には以下のような書類が求められます。
工事請負契約書(出来高払いの条件が明記されているもの) 出来高確認書(発注者の承認印あり) 請求書 過去の取引実績資料(初回利用時) 会社の基本情報(登記簿謄本、決算書など)
段階的な出来高ファクタリングの活用例
大規模な長期工事では、複数回の出来高払いとファクタリングを組み合わせた段階的な資金化戦略が効果的です。匠建設が手がけた学校施設の改修工事(1億5,000万円、工期10か月)での活用例を見てみましょう。
この工事では、以下のような出来高払いの条件が設定されていました。
着工時:前払金20%(3,000万円) 30%進捗時:出来高払い20%(3,000万円) 60%進捗時:出来高払い20%(3,000万円) 80%進捗時:出来高払い20%(3,000万円) 工事完了時:残金20%(3,000万円)
匠建設では、この出来高払いに合わせて段階的なファクタリングを実施しました。
第1段階(30%進捗時):出来高債権3,000万円のうち2,000万円をファクタリングで資金化。これにより資材の一括発注資金を確保し、コスト削減(約200万円)を実現。
第2段階(60%進捗時):出来高債権3,000万円のうち2,500万円をファクタリングで資金化。この資金を活用して別の緊急工事(自然災害復旧工事)に対応し、新規顧客を獲得。
第3段階(80%進捗時):出来高債権3,000万円のうち2,000万円をファクタリングで資金化。年度末の決算対策として手元資金を確保。
この段階的なアプローチにより、工事の各段階で必要な資金を適切なタイミングで調達することができました。田中社長は「単に資金繰りの改善だけでなく、新規案件の獲得やコスト削減など、戦略的な経営判断を可能にするツールとして出来高ファクタリングを活用しています」と語ります。
出来高ファクタリングを成功させるためのポイント
出来高ファクタリングを効果的に活用するためのポイントを、匠建設の経験から整理します。
発注者との関係構築と出来高交渉のコツ
出来高ファクタリングを円滑に進めるためには、発注者との良好な関係構築が不可欠です。匠建設では以下のような工夫をしています。
契約段階からの明確な条件設定を心がけています。請負契約書に出来高払いの条件(タイミング、割合、検査方法など)を詳細に明記することで、後のトラブルを防ぎます。
出来高査定のタイミングを工程表に明示します。発注者と事前に出来高検査の日程を共有しておくことで、スムーズな出来高確認が可能になります。
鈴木工事部長は「出来高払いをスムーズに進めるためには、日頃からの信頼関係が重要です。定期的な進捗報告や丁寧な情報共有を心がけることで、出来高確認もスムーズになります」とアドバイスします。
また、出来高交渉のコツとしては以下のようなポイントがあります。
工事の節目を出来高払いのタイミングに設定します。例えば、基礎工事完了、躯体工事完了、設備工事完了など、明確な区切りを出来高払いのタイミングにすることで、出来高の査定がしやすくなります。
写真や図面を活用した視覚的な説明を心がけます。工事の進捗状況を視覚的に示すことで、発注者の理解を促進します。
ファクタリング会社の選定と交渉のポイント
出来高ファクタリングを成功させるもう一つの鍵は、適切なファクタリング会社の選定です。匠建設では以下のような点を重視しています。
建設業の商習慣への理解度をチェックします。特に出来高払いの仕組みや公共工事の特性を理解しているファクタリング会社を選ぶことが重要です。匠建設では複数のファクタリング会社に「出来高60%の段階でファクタリングする場合の条件」を問い合わせ、建設業への理解度を確認しました。
審査スピードと必要書類の柔軟性も重要な選定基準です。出来高確認から資金化までのスピードは資金繰りに直結するため、審査の迅速さは重要なポイントです。また、出来高確認書の形式などに柔軟に対応してくれるかどうかも確認しましょう。
匠建設が最終的に選定したファクタリング会社は、建設業専門のサービスを提供しており、出来高確認書の審査経験が豊富でした。また「出来高70%以上であれば手数料を0.5%引き下げる」という条件も提示されており、コスト面でもメリットがありました。
交渉のポイントとしては、以下の点に注目しています。
継続的な取引を前提とした交渉を行います。単発ではなく、年間を通じた利用見込み額を提示することで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。匠建設では「年間約1億円の出来高債権をファクタリングする予定」と伝えることで、通常より0.5%低い手数料率を獲得しました。
複数のファクタリング会社を比較検討することも効果的です。手数料率だけでなく、審査スピードや必要書類の簡便さなども含めて総合的に比較しましょう。
出来高ファクタリングの応用と発展的活用
出来高ファクタリングの基本を押さえたうえで、より発展的な活用方法を探ります。
公共工事と民間工事の特性を活かした活用法
公共工事と民間工事では出来高払いの運用に違いがあり、それぞれの特性を理解した活用が効果的です。
公共工事の場合、出来高払いの制度が明確に規定されており、予算措置も確実なため、ファクタリング会社からの評価も高い傾向があります。匠建設では公共工事の出来高債権に対して、民間工事より0.5〜1.0%低い手数料率でファクタリングを利用できています。
一方、民間工事では契約条件の柔軟性を活かした工夫が可能です。匠建設では大型の商業施設工事において、通常の出来高払いに加えて「重要工程達成報酬」という仕組みを導入。工期短縮につながる重要な工程を予定より早く達成した場合、インセンティブとして追加支払いを受ける条件を設定しました。このインセンティブ部分もファクタリングの対象とすることで、資金繰りと収益性の両面でメリットを得ています。
季節変動対策としての戦略的活用
建設業界では季節による工事量の変動が一般的です。この季節変動に対応するための戦略的な出来高ファクタリング活用法を紹介します。
匠建設がある東北地方では、冬季(12〜3月)に除雪工事が集中し、夏季(6〜9月)は公共施設の改修工事が中心となる季節変動がありました。同社ではこの特性を踏まえた資金計画を立てています。
冬季の除雪工事(年間約1億円)は、月ごとの出来高払い(月末締め翌月末払い)が一般的です。この除雪工事の1〜2月分の出来高債権(約5,000万円)をファクタリングで資金化し、4〜5月の公共工事入札資金と夏季工事の準備資金に充てるという戦略を採用しています。
また、夏季の公共工事(年間約1億5,000万円)については、8〜9月完工予定の案件の出来高債権をファクタリングで資金化し、冬季の除雪機材メンテナンスや資材調達の資金に充てています。
田中社長は「季節ごとの資金需要を予測し、出来高ファクタリングを計画的に活用することで、年間を通じた安定した資金繰りを実現しています。これにより季節を問わず新規案件に対応できる体制が整いました」と説明します。
出来高ファクタリング活用の実績と今後の展望
最後に、匠建設が出来高ファクタリングを活用して達成した実績と、今後の展望について見ていきましょう。
出来高ファクタリング活用による経営改善効果
匠建設が出来高ファクタリングを導入して3年間で達成した主な成果は以下の通りです。
年間売上高が3億円から4億5,000万円へと約50%増加しました。資金繰りの改善により受注可能な案件数が増え、特に大型工事(5,000万円以上)の受注が年間2件から5件に増加しました。
資金効率の向上により、運転資金の借入額が約30%減少しました。これに伴い年間の支払利息が約180万円削減され、収益性の向上にもつながっています。
複数工事の同時進行が可能になったことで、工期の効率化が進み、同じ人員でより多くの工事をこなせるようになりました。これにより工事1件あたりの固定費負担が減少し、利益率が平均で2%向上しています。
田中社長は「出来高ファクタリングの活用は単なる資金繰り対策にとどまらず、経営戦略そのものを変革するきっかけとなりました。特に『受注の選択肢を広げる』という点で大きなインパクトがありました」と評価しています。
今後の展望と発展的な活用戦略
最後に、匠建設が検討している出来高ファクタリングの発展的活用戦略について紹介します。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と連動した出来高管理の高度化を進めています。3Dモデルを活用して出来高を可視化することで、発注者との出来高交渉をよりスムーズに進める取り組みです。
また、複数のファクタリング会社を案件特性に応じて使い分ける戦略も採用しています。公共工事には手数料の安いA社、民間大型案件には審査の早いB社、緊急性の高い案件には即日資金化可能なC社というように、最適な組み合わせを模索しています。
さらに、ファクタリングへの依存度を段階的に引き下げる計画も進行中です。出来高ファクタリングで事業規模を拡大しつつ、利益の一部を内部留保に回すことで自己資本比率を高め、将来的には銀行融資とのバランスのとれた資金調達構造を目指しています。
「私たちの目標は、出来高ファクタリングを『成長のためのステップ』として活用し、最終的には財務体質の強化につなげることです。建設業を取り巻く環境は常に変化していますが、柔軟な資金調達手段を持つことで、変化に強い経営体制を築いていきたいと考えています」と田中社長は将来展望を語ります。
建設業において出来高払いとファクタリングの組み合わせは、資金繰り改善の有効な手段です。工事の進捗に応じた段階的な資金化が可能になるため、特に長期工事や大型工事を手がける建設会社にとって検討する価値があるでしょう。自社の工事特性や資金需要のパターンを分析したうえで、最適な活用方法を模索してみてはいかがでしょうか。

