公共工事専門の建設業者がファクタリングで実現した安定経営

建設業界向け
社長
社長

うちは公共工事を専門にやっている建設会社なんだが、仕事は安定しているものの、資金繰りが本当に大変でね。入札から契約、工事完了、検査、そして支払いまでのサイクルが長すぎて…次の案件を取りたくても資金的に余裕がなくて躊躇することもあるんだよ。

アドバイザー
アドバイザー

公共工事ならではの悩みですね。安定した仕事でも、支払いサイクルが90日以上になることも珍しくないですから。

社長
社長

そうなんだ。前払金があっても全額ではないし、残りは検査後の支払いまで待たなければならない。民間工事と違って書類や検査も厳格だから、時間もかかるしね。この状況を何とかして改善する良い方法はないものかと…

アドバイザー
アドバイザー

実は、まさに同じように公共工事を専門とする建設会社がファクタリングを戦略的に活用して、その課題を見事に解決した事例があるんですよ。この記事では、公共工事特有の長い支払いサイクルをどのように克服し、資金繰りを安定させながら事業拡大まで実現したのか、具体的な方法と成果を詳しく紹介しています。

社長
社長

おお!それは参考になりそうだ。公共工事でもファクタリングが使えるのか、どんな工夫があったのか、ぜひ知りたいね。

公共工事専門の建設業者にとって、安定した受注量が見込める反面、長い支払いサイクルによる資金繰りの課題は常につきまといます。特に中小規模の建設会社では、工事完了から入金までの期間が長期化することで運転資金の確保に苦労するケースが少なくありません。本記事では、公共工事を専門とする建設会社がファクタリングを戦略的に活用し、安定経営を実現した事例を紹介します。

公共工事専門の建設業者が抱える資金繰りの課題

公共工事は民間工事と比較して特有の課題があります。安定した発注が見込める一方で、支払いサイクルの長さや厳格な検査体制など、資金繰りに直結する課題も多く存在します。

公共工事特有の支払いサイクルと資金繰りへの影響

東日本の地方都市で公共工事を中心に手がけるミナト建設(仮称)は、創業15年、従業員18名、年商約3億5,000万円の中小建設会社です。市や県からの道路整備、公共施設の改修、河川工事などを主に受注しています。

同社の岡田社長(仮名)は「公共工事は受注の安定性がある反面、支払いサイクルの長さが最大の課題」と語ります。典型的な公共工事では、入札から契約、工事完了、検査、そして入金までに以下のようなタイムラインが発生します。

入札から契約まで:約1か月 工事期間:案件により3〜6か月 完了検査:工事完了後約2週間 支払い処理:検査合格から約40〜60日

つまり、最短でも入札から入金まで約6か月、長いケースでは9か月以上かかることもあります。その間、材料費や外注費、人件費などの支出は先行して発生するため、常に資金繰りの圧迫に悩まされていました。

ミナト建設の実例として、ある市の公民館改修工事(4,500万円)では、工事期間が4か月、その間に資材費2,000万円、外注費1,500万円、人件費500万円と合計4,000万円の支出が先行。工事完了から入金までさらに2か月を要したため、6か月もの間、多額の資金が固定されることになりました。

年度末集中と季節変動による資金需要の波

公共工事においてもう一つの大きな課題は、年度末に工事が集中する傾向があることです。多くの自治体では年度内予算消化の必要性から、1〜3月に工事が集中し、4〜6月は端境期となります。

ミナト建設でも、売上の約40%が第4四半期(1〜3月)に集中する一方、第1四半期(4〜6月)は全体の15%程度にとどまるという季節変動がありました。この波は受注だけでなく資金需要にも大きな影響を与えます。

第4四半期には複数の工事が同時進行するため、資材や外注の支払いが集中。一方で入金は新年度(4〜6月)になるため、一時的に大きな資金需要が発生します。ミナト建設の場合、この時期に約1億円の運転資金が必要でした。

これに対し、従来は銀行融資を中心とした資金調達を行っていましたが、融資枠の制限や審査の時間的制約から、十分な資金を適時に確保することが難しく、成長の壁となっていました。

ファクタリング導入の経緯と戦略的活用法

ミナト建設がファクタリングの導入を検討し始めたのは約3年前。資金繰りの改善を模索する中で、建設業向けセミナーで公共工事とファクタリングの親和性について知ったことがきっかけでした。

公共工事の債権特性とファクタリングの親和性

岡田社長がファクタリング導入を決断した最大の理由は、公共工事の債権としての特性にありました。公共工事の債権は以下のような特徴を持ちます。

支払いの確実性が高い:自治体などの公的機関は支払い不能になるリスクが極めて低く、債権としての安全性が高い

契約内容が明確:工事請負契約書や仕様書が詳細に作成され、債権の根拠が明確

検査による品質担保:厳格な完了検査により、工事品質が担保されている

これらの特徴は、ファクタリング会社にとっても魅力的な条件となります。実際、ミナト建設が複数のファクタリング会社に相談したところ、「公共工事の債権であれば、比較的有利な条件で対応可能」との回答を得ました。

岡田社長は建設業に特化したファクタリング会社3社を比較検討。最終的に手数料率5.5%(業界平均より0.5〜1%低い)、審査期間3営業日という条件を提示したA社と契約を結びました。

年間サイクルを見据えた計画的なファクタリング活用

ミナト建設では、単発的な資金調達手段としてではなく、年間の工事サイクルを見据えた計画的なファクタリング活用戦略を構築しました。

具体的には以下のような活用法を採用しています。

第4四半期(1〜3月)に完了する工事:約70%をファクタリングで資金化

第1四半期(4〜6月)に完了する工事:約40%をファクタリングで資金化

第2・3四半期(7〜12月)に完了する工事:原則としてファクタリングは利用せず、必要に応じて銀行融資を活用

この戦略により、資金需要が最も高まる年度末から年度始めにかけての資金を確保しつつ、資金需要が比較的落ち着く時期はファクタリングコストを抑制するという、メリハリのある資金計画が可能になりました。

また複数の公共工事を同時に進行する際には、完了時期を少しずつずらすことで、ファクタリングの利用タイミングも分散させ、一時的な多額の手数料発生を避ける工夫も行っています。

ファクタリング活用で実現した安定経営と業績向上

計画的なファクタリング活用は、ミナト建設にどのような変化をもたらしたのでしょうか。具体的な効果と成果を見ていきます。

資金繰りの安定化と受注拡大の好循環

ファクタリング導入から約3年。ミナト建設の経営には大きな変化が訪れました。

最も顕著な効果は資金繰りの安定化です。工事完了後、検査合格を確認できれば速やかにファクタリングで資金化できるようになったため、従来のような「入金待ち」による資金ショートのリスクが大幅に軽減されました。

具体的には、市の道路改良工事(6,000万円)では、工事完了から3営業日後にファクタリングで5,670万円(手数料5.5%差引後)を資金化。これにより次の大型工事の着工資金をスムーズに確保できました。

この資金繰りの安定化は受注拡大にもつながりました。従来は資金繰りの制約から、同時期に複数の大型案件を受注することは避けていましたが、ファクタリングの活用により積極的な受注が可能に。結果として年商は3年間で3億5,000万円から5億円へと約43%増加しました。

また安定した資金力を背景に、技術力のある職人の確保や最新機材の導入も進み、技術的な競争力も向上。特に環境配慮型工法の導入により、「環境配慮型入札」での受注率が大幅に向上しました。

銀行融資との最適な組み合わせによる資金コスト削減

ファクタリングの導入は、単に資金調達手段を増やしただけでなく、既存の銀行融資との最適な組み合わせによる総合的な資金コスト削減ももたらしました。

ミナト建設では、資金調達を「短期運転資金」と「長期設備投資資金」に明確に区分。短期資金はファクタリングを中心に、長期資金は銀行融資を活用するという棲み分けを行いました。

具体的な効果として、当座貸越の利用頻度が大幅に減少。年間の借入金利負担が約20%減少し、約120万円のコスト削減を実現しました。

さらに興味深いことに、ファクタリングの利用実績が銀行との信頼関係構築にもプラスに働きました。「公共工事の安定受注と計画的な資金管理」という点が評価され、設備投資向け融資の金利が0.3%引き下げられるという副次的効果も得られたのです。

岡田社長は「単に資金調達手段を増やしただけでなく、融資とファクタリングを戦略的に組み合わせることで、総合的な資金コストの最適化が図れた」と評価しています。

公共工事専門業者のファクタリング活用のポイント

ミナト建設の成功事例から、公共工事を専門とする建設業者がファクタリングを活用する際のポイントを整理します。

必要書類の準備と審査通過のコツ

公共工事のファクタリングでは、正確かつ完全な書類準備が審査のカギとなります。ミナト建設では以下のような書類管理を徹底しています。

工事請負契約書:原本をスキャンし、電子データとして保管。特に「支払条件」「検査条項」など重要部分には付箋等でマーキングして素早く提示できるよう工夫。

工事完了届と検査合格通知書:これらは債権の確実性を証明する最重要書類。工事完了直後に取得し、すぐにファクタリング申請できるよう準備。

実績報告書や出来高確認書:部分払いやファクタリングの対象となる出来高を証明する書類として、写真付きで詳細に作成。

通帳や入金実績資料:過去の公共工事での入金実績を示す資料も用意し、支払いの確実性や支払いサイクルの実態を証明。

また審査通過率を高めるために、初回利用時には比較的小規模な案件(2,000万円程度)からスタートし、徐々に規模を拡大していく戦略も効果的でした。初回の実績が良好だった場合、2回目以降は審査がよりスムーズになる傾向があります。

手数料削減と効率的な活用法

公共工事のファクタリングでは、手数料コストの管理も重要なポイントです。ミナト建設では以下のような工夫で手数料の最適化を実現しています。

複数のファクタリング会社と取引関係を構築し、案件ごとに最適な会社を選択。特に公共工事専門のファクタリングプランを提供している会社と優先的に取引することで、平均手数料率を当初の5.5%から3年後には4.8%まで引き下げることに成功しました。

継続的な取引実績の積み重ねによる信頼関係構築も重要です。ミナト建設では年間利用額の目標を設定し、それを達成することで「優良顧客割引」を適用してもらえるよう交渉。結果として通常より0.3%低い手数料率を引き出すことに成功しています。

また「出来高ファクタリング」の活用も効果的です。特に長期の大型工事では、工事完了を待たずに一定の出来高(通常は70〜80%以上)に達した時点でファクタリングを利用することで、より早期の資金化を実現。資金効率の向上につながっています。

ファクタリングを支えるバックオフィス体制の構築

ファクタリングを効果的に活用するためには、社内のバックオフィス体制も重要な要素になります。ミナト建設の取り組みを見ていきましょう。

財務管理とファクタリング活用を連携させる仕組み

ミナト建設では、岡田社長が中心となって「工事管理」と「財務管理」を連携させる仕組みを構築しました。具体的には以下のような取り組みを行っています。

月次の工程会議で資金計画も同時に検討:各工事の進捗状況に合わせて、いつどの工事の債権をファクタリングするかを計画的に決定します。特に複数工事が同時進行する繁忙期には、工程調整と資金計画を連動させることで最適化を図っています。

クラウド型の工程管理ソフトを導入:各工事の進捗状況をリアルタイムで把握できるシステムを導入。現場監督がタブレットで入力した進捗データが自動的に財務担当に共有され、ファクタリングのタイミング検討に活用されています。

ファクタリング実績のデータベース化:過去のファクタリング利用実績を詳細に記録し、「どの自治体の工事が審査に通りやすいか」「どの時期にファクタリングコストが増加するか」などを分析。このデータを基に、より効率的な活用計画を立てています。

また財務担当者を1名増員し、ファクタリング関連業務を専門的に担当させることで、申請手続きの効率化と審査通過率の向上を実現しました。初回の申請では約1週間かかっていた準備作業が、現在では2日程度に短縮されています。

自治体との関係構築と情報収集

公共工事のファクタリングにおいては、発注元である自治体との良好な関係構築と情報収集も重要な要素となります。

ミナト建設では、主要取引先の自治体担当者との定期的なコミュニケーションを重視。特に「検査から支払いまでのスケジュール」「年度末の予算執行状況」などの情報を積極的に収集しています。

また自治体との信頼関係を築くことで、以下のようなメリットも生まれました。

検査日程の早期確定:工事完了後の検査日程を早めに確定してもらうことで、ファクタリングのタイミングも計画的に設定できるようになりました。

書類不備の迅速な対応:万が一書類に不備があった場合でも、自治体担当者との良好な関係により速やかな修正が可能となり、支払いスケジュールへの影響を最小化しています。

年度予算の執行見通し情報:年度末の予算執行状況に関する情報を得ることで、追加工事の可能性や支払い時期の予測精度が向上。より正確な資金計画の策定に役立てています。

ファクタリングを活用した持続可能な経営戦略

ミナト建設ではファクタリングの活用を一時的な資金調達手段ではなく、持続可能な経営戦略の一環として位置づけています。今後の展望と長期的な戦略を見ていきましょう。

公共工事とファクタリングを組み合わせた成長戦略

ミナト建設では、公共工事の安定性とファクタリングの機動性を組み合わせた成長戦略を展開しています。

まず受注戦略の見直しを行いました。従来は資金繰りの制約から一定規模以上の案件や複数の同時進行案件を避ける傾向がありましたが、ファクタリングという選択肢を得たことで、より積極的な受注戦略に転換。特に技術力を活かせる環境関連工事や防災関連工事に注力し、競合との差別化を図っています。

また、従来の地元自治体中心の受注から、隣接する市町村への営業も強化。その結果、取引自治体数が5から9に増加し、地理的なリスク分散にも成功しました。

さらに、公共工事で培った技術やノウハウを活かした新分野への展開も始まっています。具体的には公共工事の実績をアピールポイントとした民間企業の大型施設(工場や物流施設)の整備工事への参入です。ファクタリングでの資金調達経験は、民間工事の債権にも応用できるため、事業領域の拡大を資金面からも支えています。

財務基盤強化と持続可能な成長への道筋

ファクタリングは短期的な資金繰り改善だけでなく、中長期的な財務基盤強化にも貢献しています。

ミナト建設では、ファクタリングで得た資金の一部を計画的に内部留保に回すことで、自己資本比率の向上を図っています。導入前は15%だった自己資本比率が、3年後には24%まで改善。この財務体質の強化により、金融機関からの評価も向上し、より有利な条件での融資獲得にもつながっています。

また安定した資金繰りを背景に、計画的な設備投資も可能になりました。特に環境負荷低減型の建設機械への投資や、ICT施工技術の導入などを進め、生産性向上と差別化を同時に実現しています。これにより公共工事でも注目が高まっている「i-Construction」対応案件への参入も果たしました。

さらに岡田社長は「ファクタリングは永続的に利用するものではなく、財務基盤が強化されれば徐々に依存度を下げていくもの」という視点も持っています。具体的には5年後には大型案件以外のファクタリング利用を減らし、通常の運転資金は自己資金と銀行融資でまかなえる状態を目指しています。

公共工事専門の建設業者にとって、ファクタリングは単なる資金調達手段ではなく、事業成長と財務安定化を両立させるための戦略的ツールといえます。受注の安定性という公共工事のメリットと、資金化の迅速性というファクタリングのメリットを組み合わせることで、建設業界の課題である「工事代金の長い回収サイクル」を克服し、持続可能な経営基盤を築くことが可能になるのです。


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