建設業経営者が知っておくべきファクタリングの基本

建設業界向け
社長
社長

「建設業は工事の入金までのサイクルが長いから、常に資金繰りに悩まされるんだよね。人件費や材料費はすぐに支払わないといけないのに、売上金が入るのは何ヶ月も後だし…」

アドバイザー
アドバイザー

「それは大変ですね。建設業特有の課題ですよね。そういった資金繰りの問題を解決する手段として『ファクタリング』を検討されたことはありますか?」

社長
社長

「ファクタリングは名前は聞いたことがあるけど、正直よくわからないんだ。建設業でも活用できるの?手数料はどれくらいかかるの?」

アドバイザー
アドバイザー

「はい、建設業向けのファクタリングサービスもあります。売掛金を早期に現金化できるメリットは大きいですが、業者選びや契約内容には注意点もあります。この記事では建設業経営者が知っておくべきファクタリングの基礎から実践的な活用法、信頼できる業者の選び方まで詳しく解説しますよ。」

建設業界は工事の完了から入金までの期間が長く、慢性的な資金繰りの課題を抱えています。特に中小規模の建設会社にとって、売上が立っているにもかかわらず実際の入金までに数ヶ月を要するというギャップは、事業継続の大きな障壁となることがあります。そんな建設業の資金繰り課題を解決する手段として注目されているのがファクタリングです。本記事では建設業経営者が知っておくべきファクタリングの基本知識と活用法について解説します。

建設業界特有の資金繰り課題とは

工事代金の支払いサイクルと資金ギャップ

建設業界では、工事の完成から代金の入金までに長い期間を要することが一般的です。特に公共工事では検収完了から支払いまでに30日〜40日、民間工事では60日〜90日を要することもめずらしくありません。

例えば北海道の年商2億円の建設会社が受注した公共施設の改修工事(契約金額8,000万円)では、3月末に工事が完了したにもかかわらず、実際の入金は5月下旬となりました。この間、次の工事に必要な資材調達費や人件費の支払いに約3,000万円が必要となり、資金繰りに大きな負担がかかりました。

さらに元請・下請構造が複雑な建設業界では、発注者から元請け、元請けから一次下請け、一次下請けから二次下請けといった具合に、支払いが順次行われるため、下請けになるほど入金までの期間が長くなる傾向があります。関東地方の年商1億5,000万円の内装工事業者は、大手ゼネコンの下請け工事(5,000万円)で工事完了から入金までに約3ヶ月を要した経験があります。

このような長い支払いサイクルと、資材調達や人件費などの先行投資が必要な業界特性が、建設業の資金繰りを難しくしている大きな要因です。

季節変動による資金需要の波

建設業界ではさらに季節による工事量の変動も資金繰りに大きな影響を与えています。

多くの地域では5月から11月が建設工事の繁忙期となり、この時期には複数の工事が同時進行することも少なくありません。この時期は資材調達費や人件費、外注費などの支出が集中する一方、入金は工事完了後にずれ込むため、一時的な資金不足に陥りやすくなります。

中部地方の年商3億円の建設会社では、7月から9月の繁忙期に5件の工事(合計工事金額2億円)が同時進行するなか、資材や外注費の支払いが月に約5,000万円発生する一方、大きな入金は10月以降になるという状況に直面しました。

一方、12月から2月の冬季は多くの地域で工事量が減少し、特に積雪地域では屋外工事がほぼ停止する場合もあります。この時期は新規の売上が立ちにくい一方で、事務所家賃や従業員給与などの固定費は継続して発生するため、別の意味での資金繰り課題が生じます。

九州地方の年商2億円の建設会社では、12月から2月の閑散期に月間売上が通常の半分程度に落ち込む一方、固定費は月に約800万円発生していました。この時期の資金繰りをどう乗り切るかが経営上の大きな課題となっていました。

ファクタリングの基本的な仕組みと種類

ファクタリングとは何か

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権(未回収の売上債権)をファクタリング会社に売却して早期に資金化するサービスです。建設業においては、工事完了後の完成工事未収入金や、出来高に応じた請求債権を売却することで、支払期日を待たずに資金を調達できます。

ファクタリングは借入ではなく債権売却であるため、金融機関からの融資と異なり、財務状況だけでなく債権(取引先)の信用力が重視される特徴があります。また融資と異なり、バランスシート上では「売掛金」が減少し「現金・預金」が増加するという資産の入れ替わりが生じるだけで、新たな負債は計上されません。

例えば東北地方の年商1億8,000万円の建設会社では、すでに借入金が多く新規融資が難しい状況でしたが、公共工事の完成工事債権(3,000万円)をファクタリングで資金化することで、次の工事に必要な資金を調達することができました。負債を増やさずに資金調達できる点が大きなメリットとなりました。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い

建設業界でよく利用されるファクタリングには、主に2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類があります。

2社間ファクタリングは、建設会社(債権者)とファクタリング会社の間だけで契約が完結する形態です。債務者(発注者)に通知することなく利用できる点が大きなメリットですが、債務者に知られないことによるリスクプレミアムとして、手数料率は比較的高めに設定されることが多いです(一般的に8%〜15%程度)。

例えば関西地方の年商2億円の建設会社は、長年取引のある大手ゼネコンへの配慮から、2社間ファクタリングを選択しました。手数料率は12%(債権額3,000万円に対して360万円)と比較的高めでしたが、2営業日という短期間で資金調達ができ、取引先との関係を維持したまま資金繰りを改善することができました。

一方、3社間ファクタリングは、建設会社、ファクタリング会社、債務者(発注者)の三者が関与する形態です。債権譲渡の通知と承諾が必要となるため手続きが複雑になりますが、債務者の支払い義務が明確になることで手数料率は低く抑えられる傾向があります(一般的に3%〜8%程度)。

中部地方の年商2億5,000万円の建設会社では、市発注の公共工事(契約金額1億円)の債権をファクタリングする際、3社間方式を選択しました。市の承諾取得に約2週間を要しましたが、手数料率4.5%(債権額5,000万円に対して225万円)という好条件で資金化することができました。

建設業界におけるファクタリング活用のメリット

即時の資金調達と事業機会の確保

ファクタリングの最大のメリットは、売掛債権を即時に資金化できる点にあります。建設業界では次の工事の着工資金や、複数工事の並行実施に必要な運転資金の確保が重要ですが、ファクタリングはこうしたニーズに素早く対応できます。

北海道の年商1億2,000万円の建設会社は、冬季に入る直前の11月に大型の除雪機械(1,800万円)を購入する機会がありましたが、手元資金が不足していました。完成済みの公共工事債権(2,500万円)をファクタリングで資金化することで、除雪機械を購入し、冬季の除雪作業受注という新たな事業機会を確保することができました。ファクタリング手数料(約200万円)を支払っても、新規事業による利益でカバーできると判断しました。

また建設業界では、工期の厳守が信頼獲得の重要な要素となります。資金不足により資材調達や外注業者への支払いが遅れると、工事全体の進捗に影響を及ぼす可能性があります。即時の資金調達が可能なファクタリングは、このような事態を回避する上でも効果的です。

関東地方の年商3億円の建設会社は、大型商業施設の改装工事中に当初想定外の構造補強が必要となり、追加で約1,500万円の資材費と外注費が発生しました。別の工事の完成債権(2,000万円)をファクタリングで資金化することで、追加費用をカバーし、工期どおりに工事を完了させることができました。これにより発注元からの信頼を獲得し、翌年も継続して受注を得ることができました。

季節変動への対応と固定費の安定確保

建設業界特有の季節変動による資金繰りの波にも、ファクタリングは効果的に対応できます。

繁忙期には複数の工事が同時進行するため資金需要が膨らみますが、ファクタリングを活用することで先行する工事の債権を資金化し、並行して進む他の工事の資金に充てることができます。

例えば九州地方の年商2億円の建設会社では、夏の繁忙期に3件の工事が並行して進み、月間約4,000万円の資金需要がありました。この状況で最も進捗の進んだ工事の出来高債権(3,500万円)をファクタリングで資金化し、他の2件の工事に必要な資材調達と人件費をカバーすることで、すべての工事をスケジュール通りに進めることができました。

一方、閑散期には工事量が減少し収入が低下しがちですが、その直前の時期に完成した工事債権をファクタリングすることで、閑散期の固定費をカバーする運転資金を事前に確保することができます。

東北地方の年商1億5,000万円の建設会社では、冬季閑散期(12月〜2月)の前に、11月完成の工事債権(3,000万円)をファクタリングで資金化し、冬季3ヶ月間の固定費(月約600万円×3ヶ月=1,800万円)をカバーする資金を確保。残りは4月からの新規工事の準備資金として確保しました。これにより冬季の資金繰り不安なく事業を継続することができました。

建設業界でファクタリングを活用する際の留意点

手数料とコスト評価の考え方

ファクタリングを活用する際の最大の懸念点は手数料コストです。一般的に2社間ファクタリングで8%〜15%、3社間ファクタリングで3%〜8%程度の手数料率が適用されますが、これをどう評価するかが重要です。

単純に金利換算すると高コストに見えるファクタリングですが、「資金確保のコスト」ではなく「ビジネスチャンスを逃さないための投資」と捉えることが建設業界では重要です。

例えば関西地方の年商2億円の建設会社では、大型工事(1億円)の受注機会があったものの、着工資金が不足していました。既存の完成工事債権(5,000万円)をファクタリングで資金化する際、手数料率10%(500万円)という条件に一瞬ためらいましたが、新規工事から得られる利益(約1,500万円)を考慮して利用を決断しました。結果として手数料を大幅に上回る利益を確保できたと評価しています。

また資金不足によって工期遅延や品質低下が生じるリスクも考慮すべきです。そうしたリスクが信用損失につながる可能性と、ファクタリング手数料のコストを比較することも大切です。

東京の年商3億5,000万円の建設会社では、大型工事の途中で資金ショートし、協力業者への支払いが遅延する恐れが生じました。5,000万円の出来高債権をファクタリングで資金化する際、手数料率9%(450万円)という費用を支払うことになりましたが、支払い遅延による協力業者との関係悪化や、それに伴う工期遅延のリスクを回避できたことを考えると、適切な判断だったと評価しています。

適切なファクタリング会社の選び方

建設業向けのファクタリングサービスは多数ありますが、その中から自社に適したサービスを選ぶことが重要です。

まず建設業界の特性を理解しているかどうかがポイントとなります。建設業特有の契約形態や支払い条件、必要書類などを理解しているファクタリング会社を選ぶことで、スムーズな取引が期待できます。

中部地方の年商2億円の建設会社では、一般的なファクタリング会社に相談した際、「出来高払いの債権は取り扱っていない」と断られた経験がありました。その後、建設業専門のファクタリング会社を利用したところ、出来高査定書の内容を適切に評価し、スムーズに取引が完了したと報告しています。

次に契約条件の透明性も重要です。手数料率以外にも、申込手数料、事務手数料、支払い遅延時の追加手数料などが設定されている場合があるため、すべての費用を事前に確認することが必要です。特に「買戻し条項」(債務者が支払わなかった場合に債権を買い戻す義務)の有無は重要なチェックポイントです。

九州地方の建設会社では、手数料率が低いファクタリング会社と契約したものの、契約後に「審査料」「緊急対応料」などの名目で追加請求を受け、実質的な手数料率が当初の想定を大きく上回った経験があります。契約前に全ての費用項目を確認することが重要です。

また資金化までのスピードや、必要書類の簡便さも重要な選定基準です。建設業では資金需要が急に発生することも多いため、審査から資金化までのスピードが重要となります。

東北の建設会社では、複数のファクタリング会社を比較した結果、手数料率は若干高めでも、必要書類が少なく審査から入金まで3営業日というスピード対応が可能な会社を選択しました。資金需要の緊急性を考慮した場合、適切な選択だったと評価しています。

建設業に適したファクタリング活用事例

公共工事と民間工事の両立を実現した事例

建設業でファクタリングを効果的に活用した具体的な事例を紹介します。

関東地方の年商3億円の建設会社Aは、公共工事と民間工事の両方を手掛けており、それぞれの支払いサイクルの違いによる資金繰りの課題を抱えていました。公共工事は信用力が高く受注したいものの、支払いサイクルが長いため資金繰りが厳しくなるというジレンマがありました。

A社は以下のようなファクタリング戦略を立てました。公共工事債権は3社間ファクタリングを利用し、手数料率は平均5%と比較的低コストでの資金化を実現。一方、民間工事債権は必要に応じて2社間ファクタリングを利用し、スピード重視の資金調達を行いました。

具体的には市発注の公共施設改修工事(1億円)の債権を3社間ファクタリングで資金化。手数料率4.5%(225万円)で約4,775万円を調達し、これを大型工事の着工資金に充てました。同時期に完成した民間商業施設工事(3,000万円)の債権は2社間ファクタリングで資金化。手数料率11%(330万円)でしたが、わずか2営業日で約2,670万円を調達し、緊急の外注費支払いに充てることができました。

このようにファクタリングの種類を使い分けることで、公共工事と民間工事の両方をバランスよく受注しつつ、資金繰りの安定化を実現しました。結果として前年比20%増の売上を達成し、ファクタリング手数料を支払っても十分なメリットがあったと評価しています。

季節変動を乗り切った建設会社の事例

季節変動の大きい地域でファクタリングを活用した事例も見てみましょう。

北海道の年商2億5,000万円の建設会社Bは、冬季(12月〜3月)の工事量が大幅に減少するという季節変動の課題を抱えていました。特に固定費(人件費、事務所家賃、機材リース料など)が月に約800万円発生する中、冬季4ヶ月間の運転資金約3,200万円をどう確保するかが経営課題でした。

B社はファクタリングを活用した季節対策を立てました。11月までに完成した複数の工事債権(合計7,000万円)を計画的にファクタリングで資金化。公共工事債権5,000万円は3社間ファクタリングで手数料率5%(250万円)、民間工事債権2,000万円は2社間ファクタリングで手数料率10%(200万円)という条件で、合計約6,550万円の資金を調達しました。

この資金から冬季4ヶ月分の固定費約3,200万円を確保し、残りは4月からの新規工事の着工準備資金や、冬季でも実施可能な室内改修工事の材料費などに充当しました。また一部は従業員の技能向上のための研修費用にも充て、閑散期を人材育成の機会として活用しました。

結果として資金繰りの心配なく冬季を乗り切ることができ、4月からの繁忙期にはすぐに工事を開始できる体制を整えることができました。また従業員の雇用を維持し技能向上を図ることで、人材の流出を防ぎ、翌年の繁忙期に人手不足に陥るリスクも回避できました。ファクタリングの手数料総額450万円を考慮しても、安定経営の実現というメリットは十分に大きかったと評価しています。

建設業界の経営者にとって、ファクタリングは単なる資金調達手段にとどまらず、事業機会の確保や季節変動への対応、安定的な経営基盤の構築など、多面的な経営課題を解決するツールとなり得ます。自社の状況に合わせて適切なファクタリングサービスを選び、戦略的に活用することで、建設業特有の資金繰り課題を克服し、事業の成長と安定を実現することができるでしょう。

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