
大型工事を受注したものの、着工資金の調達に頭を悩ませています。銀行融資を申し込んだのですが、審査に時間がかかると言われて…

建設業は資金需要が大きい割に、銀行融資だけでは対応しきれないケースが多いですよね

そうなんです!銀行からは『融資枠の上限』と言われましたが、工事は待ってくれません。最近よく聞くファクタリングも検討していますが、銀行融資と比べてどう使い分ければ良いのでしょうか?

実は銀行融資とファクタリングは競合するものではなく、うまく組み合わせることで効果的な資金調達が可能なんですよ

そうなんですか?でも銀行から『ファクタリングを使うと融資が厳しくなる』と言われたこともあって…。具体的にどのように使い分けるべきなのでしょうか?

この記事では、建設会社における銀行融資とファクタリングの特徴や違い、それぞれに適した資金需要の種類、そして両者を効果的に組み合わせた資金調達戦略を詳しく解説しています
建設業界では工事着工から代金回収までの期間が長いことや、季節変動による資金需要の波など、資金繰りに関する課題が常につきまといます。こうした状況に対応するため、銀行融資とファクタリングという2つの主要な資金調達手段を効果的に使い分けることが、安定した経営の鍵となります。それぞれの特性を理解し、状況に応じて最適な選択をすることで、資金調達コストの最適化と事業の成長機会の最大化を図ることができます。本記事では、建設会社が銀行融資とファクタリングをどのように使い分けるべきか、具体的な戦略と実践例を交えて解説します。
建設業界における資金調達の課題
工事サイクルと入金タイミングのミスマッチ
建設業界では、工事の着工から代金回収までの期間が非常に長いことが特徴です。一般的な建設工事では、契約締結から着工、完工、検収、請求書発行、そして入金まで、3〜6ヶ月のサイクルがかかることも珍しくありません。
例えば、年商2億円の中堅建設会社が3000万円の工事を請け負った場合、資材費や外注費として工事金額の約40%(1200万円)を着工時に支払う必要があります。さらに工事進行に伴い、人件費や追加資材費が発生します。しかし、工事代金は完成検収後、請求書発行から30〜60日後に入金されるケースが一般的です。このように、支出が先行し、収入が後からついてくるという資金フローの構造が、建設業の資金繰りを難しくしています。
季節変動による資金需要の波
建設業は季節によって工事量や資金需要が大きく変動する特徴があります。一般的に年度末(1〜3月)に工事が集中する傾向があり、この時期には資材調達や外注費の支払いなど、資金需要が急増します。
例えば、年商1億5000万円の建設会社では、年間売上の約40%(6000万円)が1〜3月に集中し、この時期の運転資金需要が年間で最も高くなります。一方、梅雨時期や冬季は天候の影響で工事が減少し、売上が落ち込む傾向にあります。この季節変動に合わせた資金調達が必要となるのです。
受注変動と固定費のバランス
建設業では、大型工事の受注状況によって月々の収入が大きく変動する一方、人件費や事務所維持費などの固定費は一定して発生します。例えば、年商3億円の建設会社では、毎月約1500万円の固定費(人件費、事務所費、車両維持費など)がかかりますが、月々の工事受注額は1000万円から5000万円まで大きく変動することもあります。
この受注変動と固定費のバランスをとるためには、柔軟な資金調達の仕組みが不可欠です。銀行融資とファクタリングの特性を理解し、状況に応じた使い分けが重要になります。
銀行融資の特徴と建設業での活用ポイント
建設業に適した融資の種類
建設業で活用される銀行融資には、主に以下のような種類があります。
運転資金融資は、日常的な資金繰りをサポートするものです。年商3億円の建設会社なら、通常3000万円〜5000万円程度の融資枠が設定されるケースが多いです。工事の着工資金や人件費など、定常的な資金需要に対応します。
設備資金融資は、建設機械や車両、事務所などの設備投資に活用されます。例えば、2000万円のクレーン車を購入する際に、5年返済の設備資金融資を利用するといった活用方法です。購入する設備が担保となるため、比較的審査が通りやすい特徴があります。
公共工事前払金保証制度に基づく融資も建設業特有のものです。公共工事を受注した際、契約金額の40%程度を前払いとして受け取れる制度があり、これを担保に融資を受けることができます。例えば、1億円の公共工事を受注した場合、4000万円の前払金が支給されるため、工事着手前の資金繰りが大幅に改善されます。
銀行融資のメリットと限界
銀行融資の最大のメリットは、コストの低さです。現在の金利環境では、中小建設会社向けの融資金利は年1.5%〜3.5%程度が一般的です。例えば、3000万円を年利2%で借りた場合の年間利息は60万円にすぎません。
また、長期にわたる計画的な資金調達が可能な点も大きなメリットです。例えば、季節変動に対応するための運転資金として、年間を通じて一定額の融資枠を確保しておくことで、安定した事業運営が可能になります。
一方で、銀行融資には以下のような限界もあります。
審査期間の長さは大きな課題です。新規融資の場合、申込みから実行まで1〜2ヶ月かかることも珍しくありません。緊急の資金需要には対応しきれないケースが多いです。
また、財務状況や業歴による制約も大きいです。創業間もない建設会社や、一時的に業績が悪化している企業は、希望通りの融資を受けられないことがあります。例えば、債務超過状態の建設会社では、担保や保証人がない限り、新規融資は極めて難しくなります。
さらに、融資限度額の制約も考慮する必要があります。一般的に、銀行は年商の1〜2ヶ月分程度を融資限度額の目安としています。年商2億円の建設会社なら、最大でも3000万円〜4000万円程度が融資の上限となりがちです。
建設業界特有の融資審査のポイント
銀行が建設会社の融資審査を行う際には、以下のようなポイントを重視する傾向があります。
受注残高と工事進捗状況は重要な審査ポイントです。例えば、年商3億円の建設会社が半年分の工事受注(1億5000万円程度)を確保している場合、今後の返済能力に対する評価が高まります。逆に、受注残高が少ない状態での融資申請は厳しい審査となりがちです。
元請け・下請けの取引構造も重視されます。大手ゼネコンや公共工事からの安定した受注がある建設会社は、銀行からの評価が高くなります。例えば、売上の70%が大手元請けからの工事である場合、資金繰りの安定性が評価され、融資条件が有利になるケースがあります。
過去の工事利益率も重要な判断材料です。業界平均(5〜10%程度)を上回る利益率を維持している建設会社は、融資審査で有利になります。例えば、直近3年間の平均利益率が12%の建設会社は、同規模でも利益率5%の会社より融資を受けやすい傾向にあります。
ファクタリングの特徴と建設業での活用ポイント
建設業に適したファクタリングのタイプ
建設業界で活用されるファクタリングには、いくつかのタイプがあります。
2社間ファクタリングは、建設会社とファクタリング会社の間だけで完結する取引です。元請けや発注者に知られることなく利用できるメリットがありますが、手数料率は比較的高め(10〜15%程度)です。例えば、2000万円の売掛金を2社間ファクタリングで現金化する場合、手数料が300万円(15%)かかると、実際に受け取れる金額は1700万円となります。
3社間ファクタリングは、売掛先(元請けや発注者)を含めた三者間の契約となります。売掛先の承諾が必要ですが、その分手数料率は低く(5〜10%程度)設定されていることが多いです。例えば、同じ2000万円の売掛金でも、3社間ファクタリングなら手数料が160万円(8%)で済み、1840万円を受け取れる可能性があります。
また、建設業特化型のファクタリングサービスも存在します。出来高払いや部分払いなど、建設業特有の契約形態に対応したサービスで、公共工事の支払いサイクルに合わせた条件設定が可能です。
ファクタリングのメリットと限界
ファクタリングの最大のメリットは、スピードの速さです。審査から入金まで最短で3営業日程度と、銀行融資と比べて圧倒的に迅速です。例えば、月末の協力業者への支払いが迫っている状況で、急な資金需要が発生した場合でも対応可能です。
また、売掛金の信用力で判断されるため、自社の財務状況に問題があっても利用できる点も大きなメリットです。例えば、一時的に赤字となり、銀行融資が難しくなった建設会社でも、大手ゼネコンからの工事代金であれば、ファクタリングで資金化できる可能性が高いです。
さらに、ノンリコースタイプ(償還請求権なし)のファクタリングであれば、売掛先の支払い遅延や不払いリスクをファクタリング会社に転嫁できるメリットもあります。
一方、ファクタリングの主な限界は以下の通りです。
コストの高さが最大の課題です。手数料率は5〜15%程度と、銀行融資の金利(年1.5〜3.5%)と比べて大幅に高くなります。例えば、3000万円の売掛金を手数料10%でファクタリングすると、300万円のコストがかかります。
また、売掛債権が既に存在していることが前提となるため、新規の工事着手資金など、売掛金発生前の資金需要には対応できません。例えば、新たに受注した工事の着工資金をファクタリングで調達することはできないのです。
建設業界特有のファクタリング活用シーン
建設業界では、以下のようなシーンでファクタリングが特に有効です。
工事の完了から入金までの「つなぎ資金」として活用するケースが最も一般的です。例えば、5000万円の工事が完了し検収も終わったものの、入金までに60日かかる場合、ファクタリングで即時に資金化することで、次の工事の着工資金に充てることができます。
季節的な資金需要の波に対応するためにも有効です。例えば、年度末の工事集中期に資金需要が高まる場合、それまでに完了した工事の売掛金をファクタリングで現金化し、繁忙期の運転資金として活用できます。
また、突発的な大型案件の受注時にも活用できます。例えば、年商2億円の建設会社が、突然1億円の大型案件を受注したとします。銀行融資の限度額を超える資金が必要な場合、既存の売掛金をファクタリングすることで、大型案件に対応するための追加資金を確保できます。
銀行融資とファクタリングの効果的な使い分け戦略
資金需要の種類による使い分け
資金需要の性質によって、銀行融資とファクタリングを効果的に使い分けることが重要です。
長期的・計画的な資金需要には銀行融資が適しています。例えば、年間を通じた基本的な運転資金(固定費の2〜3ヶ月分)や、設備投資資金などは、低金利の銀行融資で対応するのが合理的です。年商3億円の建設会社なら、月間固定費1500万円の3ヶ月分、計4500万円程度を銀行からの運転資金融資で確保しておくといった方針が考えられます。
一方、短期的・変動的な資金需要にはファクタリングが適しています。例えば、特定の大型工事の完了後、次の工事までの「つなぎ資金」や、年度末の一時的な資金需要増などは、ファクタリングで対応するのが効果的です。年商2億円の建設会社が、年度末(1〜3月)に売上の40%(8000万円)が集中する場合、この時期に向けて計画的にファクタリングを活用するといった戦略があります。
緊急度による使い分け
資金需要の緊急度によっても、最適な選択は異なります。
緊急性の高い資金需要(1週間以内に必要)には、ファクタリングが圧倒的に有利です。例えば、月末の協力業者への支払い(2000万円)が迫っているのに、元請けからの入金が遅れるというケースでは、完了工事の売掛金をファクタリングすることで、支払いの遅延を回避できます。
一方、計画的に対応できる資金需要(1ヶ月以上先)には、じっくりと銀行融資を検討する余裕があります。例えば、2ヶ月後に着工予定の大型工事(5000万円)の資金準備なら、十分な時間的余裕を持って銀行融資を申請できます。
予測可能だが緊急性もある資金需要(2週間〜1ヶ月)に対しては、銀行のコミットメントラインや当座貸越といった機動的な融資と、ファクタリングを状況に応じて選択するのが合理的です。
コスト効率による使い分け
資金調達のコスト効率も重要な判断基準です。
資金使途の利益率とコストのバランスを考慮します。例えば、利益率15%の工事のための資金調達なら、手数料率10%のファクタリングでも採算が取れますが、利益率5%の工事であれば、金利2%の銀行融資の方が明らかに合理的です。
調達期間も考慮すべき要素です。例えば、3000万円を3ヶ月間必要とする場合、銀行融資なら金利2%として15万円のコストですが、ファクタリングなら手数料率10%として300万円のコストがかかります。短期間で返済・回収できる資金需要なら、コスト高でもファクタリングの選択肢があり得ますが、長期間必要な資金は銀行融資が圧倒的に有利です。
建設会社の成功事例から学ぶ最適な使い分け
A建設:季節変動に対応した融資とファクタリングの組み合わせ
年商2億5000万円のA建設は、典型的な季節変動課題を抱えていました。1〜3月の年度末に売上の約45%(1億1250万円)が集中し、この時期に大きな資金需要が発生していました。一方、7〜9月は閑散期で売上が大幅に落ち込む傾向がありました。
A建設は以下のような資金調達戦略を実施しました。
まず、年間を通じて必要な基本運転資金として、銀行から4000万円の当座貸越枠を設定しました。金利は年2.2%で、年間最大88万円の金融コストとなります。これにより、閑散期の固定費(月1200万円)をカバーできる体制を整えました。
次に、年度末の繁忙期に向けた追加資金として、12月と1月に完了する工事の売掛金(合計5000万円)をファクタリングで現金化する計画を立てました。手数料率は平均11%で、コストは550万円となります。
この組み合わせにより、A建設は以下のような成果を得ました。
年度末の資金不足を完全に解消し、すべての支払いを予定通り実施できるようになりました。これにより協力業者からの信頼が高まり、緊急時の応援体制も強化されました。
銀行との関係も良好に保たれ、次年度には融資枠が5000万円に拡大。金利も2.0%に引き下げられました。
年間の資金調達コストは総額約600万円でしたが、資金繰りの安定により新規受注が15%増加し、約3750万円の売上増につながりました。結果として、資金調達コストを大幅に上回るメリットを享受できました。
B工務店:大型案件受注時の融資とファクタリングの戦略的活用
年商1億8000万円のB工務店は、突如として7000万円の大型公共工事を受注する機会を得ました。これは通常の工事規模の3倍以上であり、着工資金の確保が大きな課題となりました。
B工務店は以下のように銀行融資とファクタリングを組み合わせました。
まず、公共工事前払金保証制度を活用し、工事金額の40%(2800万円)を前払いとして受け取りました。これにより当面の資材費をカバーできましたが、まだ人件費や外注費に不足がありました。
次に、既存の銀行融資枠(3000万円)から2000万円を活用しました。しかし、それでもなお1500万円程度が不足する状況でした。
最後に、完了済みの別工事2件(合計2000万円)の売掛金をファクタリングで現金化。手数料率13%(260万円)で、実際に1740万円を調達しました。
この結果、B工務店は以下のような成果を得ました。
大型工事を予定通り着工でき、無事に完工。これにより公共工事の実績を積み上げることに成功しました。
ファクタリングのコスト(260万円)はかかりましたが、大型工事からの利益(約1050万円)で十分にカバーできました。
この実績を基に、翌年には銀行の融資枠が5000万円に拡大し、さらに大型案件にも対応できる体制が整いました。
建設会社のための資金調達計画の立て方
年間の資金需要予測と調達計画
効果的な銀行融資とファクタリングの使い分けには、年間の資金需要を正確に予測することが不可欠です。
月別の入出金予測が基本となります。過去2〜3年のデータを分析し、月ごとの売上高、資材費、外注費、人件費などをグラフ化します。例えば、年商2億円の建設会社なら、月別の資金過不足を一覧表にすることで、どの時期にどの程度の追加資金が必要か把握できます。
工事別の資金計画も重要です。特に大型工事の場合、着工時期、出来高払いのタイミング、完工時期などを明確にし、それぞれのタイミングでの資金需要を予測します。例えば、6ヶ月・5000万円の工事では、月ごとの必要資金と入金予定を工程表と連動させて計画します。
これらの予測をもとに、銀行融資とファクタリングの最適な組み合わせを計画します。例えば「基本運転資金の3000万円は銀行融資、繁忙期の追加2000万円はファクタリング」といった具体的な調達計画を立てます。
銀行とファクタリング会社との関係構築
効果的な資金調達のためには、銀行とファクタリング会社の双方と良好な関係を構築することが重要です。
銀行との関係では、定期的な業況報告と将来計画の共有が基本です。四半期ごとに財務状況や工事の進捗状況、受注見通しなどを報告し、信頼関係を深めます。これにより、必要な時に融資を受けやすくなります。
ファクタリング会社との関係でも、継続的な取引が有利な条件につながります。例えば、年間1億円の取引実績があれば、手数料率を当初の13%から10%に引き下げてもらえるケースもあります。複数のファクタリング会社と取引関係を持ち、状況に応じて最適な会社を選ぶことも効果的です。
また、銀行融資とファクタリングの両方を活用していることを、それぞれに適切に説明することも重要です。例えば、銀行には「一時的な資金需要の変動にはファクタリングで対応し、長期的・安定的な資金需要には銀行融資を活用している」と説明することで、融資枠の維持・拡大につなげられます。
資金調達コストの最適化のための実務ポイント
銀行融資とファクタリングの使い分けで重要なのは、総合的な資金調達コストの最適化です。
手数料・金利の定期的な見直しは基本です。銀行融資の金利や、ファクタリングの手数料率は交渉の余地があります。例えば、取引実績が増えれば、ファクタリングの手数料率を1〜2%引き下げてもらえることもあります。半年に一度は条件の見直し交渉を行うと良いでしょう。
タイミングの最適化も重要です。例えば、入金予定日の直前にファクタリングを利用するよりも、必要なタイミングに合わせて利用する方がコスト効率が良くなります。入金まで60日あるが資金は今すぐ必要という場合と、入金まで10日だが資金も10日後に必要という場合では、後者の方がファクタリングコストは低くなります。
また、銀行融資とファクタリングのハイブリッド戦略も効果的です。例えば、ファクタリングで調達した資金を一時的に活用した後、銀行融資が実行されたらファクタリングで調達した分を返済するといった方法です。これにより、高コストのファクタリングの利用期間を最小限に抑えることができます。
建設業界における資金調達は、その事業特性から常に大きな課題となっています。工事の入金サイクルの長さや季節変動による資金需要の波に効果的に対応するためには、銀行融資とファクタリングという2つの主要な資金調達手段を状況に応じて巧みに使い分けることが重要です。
銀行融資は低コストで長期的・計画的な資金需要に適していますが、審査に時間がかかり、融資枠の制約もあります。一方、ファクタリングは即時性に優れ、財務状況に左右されにくいメリットがありますが、コストが高く、既存の売掛金が前提となる制約があります。
これらの特性を理解した上で、資金需要の種類や緊急度、コスト効率などを考慮し、最適な使い分けを行うことが、安定した経営の実現につながります。年間の資金需要を正確に予測し、計画的な資金調達戦略を立てることで、成長機会を逃さず、かつ資金調達コストを最適化することが可能になるでしょう。

