
ファクタリングを利用して資金繰りを改善したいんだけど、税務処理がよくわからなくて踏み切れないんだよね。建設業特有の会計処理もあるし、手数料はどう計上すればいいのかな?

建設業のファクタリング利用における税務処理は確かに悩ましいポイントですね。特に完成工事未収入金の処理や手数料の経費計上には注意が必要です。

そうなんだよ。あと、消費税の取り扱いや決算対策としての活用法も知りたいんだ。税理士に相談する前に、基本的なことは自分でも理解しておきたくて….

その姿勢は素晴らしいですね。実は建設業におけるファクタリングの税務処理は、工事進行基準や完成基準との兼ね合いもあって、一般企業とは少し異なる点があります。

なるほど。具体的にどういう処理をすれば税務上問題ないのか、わかりやすく知りたいな。税務調査でも指摘されないようにしたいし。

この記事では、建設会社がファクタリングを利用する際の正しい税務処理方法や、手数料の経費計上のタイミング、節税効果の活かし方まで詳しく解説しています。税理士監修の内容なので、安心して参考にできますよ。
建設業界におけるファクタリング活用の税務的意義
建設業界では、工事完了から入金までの期間が長期化する傾向があります。公共工事では60日から90日、大型民間工事でも45日から60日が一般的で、この入金待ち期間が資金繰りを圧迫する要因となっています。
年商1億円の建設会社を例にすると、毎月8,000万円程度の工事を完成させていても、平均60日の入金サイクルにより、常時1億6,000万円程度の売掛金(完成工事未収入金)が滞留している状況が生じます。この資金繰り課題を解決する手段として、ファクタリングの活用が広がっていますが、その会計処理や税務上の取り扱いには独自の注意点があります。
ファクタリングとは、完成工事未収入金などの売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に資金化するサービスです。建設業における税務処理の視点からは、完成工事高の計上時期、ファクタリング手数料の経費処理、消費税の取り扱いなど、複数の論点があります。
適切な税務処理を行うことで、ファクタリングによる資金調達のメリットを最大化しつつ、税務リスクを最小化することが可能です。建設業特有の税務慣行を踏まえたファクタリングの処理方法を理解することは、経営管理の質を高める上で重要な要素となります。
ファクタリングの基本的な税務・会計処理
ファクタリングの会計上の位置づけ
ファクタリングは税務・会計上、主に「債権譲渡」として処理されます。建設会社(売主)が保有する完成工事未収入金をファクタリング会社(買主)に売却する取引です。
基本的な仕訳は以下のようになります。
完成工事未収入金1,000万円をファクタリングで売却し、手数料50万円を差し引いた950万円が入金された場合:
(借方)現金預金 950万円 (貸方)完成工事未収入金 1,000万円 (借方)支払手数料 50万円
この仕訳により、貸借対照表上では完成工事未収入金が減少し、現金預金が増加します。また、損益計算書上では支払手数料が費用計上されます。
年商3億円の建設会社では、四半期ごとに約5,000万円の完成工事未収入金をファクタリングで資金化することで、常に手元資金を確保する戦略を取っていました。このケースでは年間約200万円のファクタリング手数料が発生しましたが、これを適切に経費処理することで税務上のメリットも享受できています。
償還請求権の有無による処理の違い
ファクタリングには、「償還請求権あり(リコースファクタリング)」と「償還請求権なし(ノンリコースファクタリング)」の2種類があり、税務処理も異なります。
償還請求権ありの場合、発注元(債務者)が支払不能となった際、ファクタリング会社は建設会社に債権額の返還を求めることができます。この場合、会計上は「金融取引」としての性格が強まり、「借入金」として処理するケースもあります。
建設業では公共工事や大手企業との取引では支払不能リスクが低いため、ノンリコースファクタリングが選択できるケースが多いです。一方、中小企業や個人顧客との取引では、リコースファクタリングになりやすい傾向があります。
年商7,000万円の内装工事会社では、大手商業施設からの受注工事(2,500万円)についてはノンリコースファクタリングを利用し「債権譲渡」として処理する一方、個人発注の住宅リフォーム工事(500万円×複数件)についてはリコースファクタリングを利用し「短期借入金」として処理するという使い分けを行っていました。
建設業特有のファクタリング税務処理ポイント
工事進行基準と完成基準における違い
建設業では、工事収益の計上方法として「工事進行基準」と「工事完成基準」の二種類があります。この違いはファクタリングの税務処理にも影響します。
工事進行基準を採用している場合、工事の進捗度に応じて収益を計上します。例えば年商2億円の建設会社が1億円の大型工事を受注し、当期末時点で工事の進捗率が40%の場合、4,000万円の完成工事高を計上します。この状態で出来高部分をファクタリングする場合、すでに収益計上している範囲内であれば通常のファクタリング処理が可能です。
一方、工事完成基準を採用している会社では、工事が完全に完了するまで収益を計上しません。この場合、工事完了前の出来高部分をファクタリングすると、収益計上時期と資金化時期にずれが生じるため、税務上の取り扱いに注意が必要です。
年商1億5,000万円の建設会社では、工事完成基準を採用していましたが、6ヶ月にわたる3,000万円の大型工事で資金繰りが厳しくなりました。中間出来高(50%完了時点)でファクタリングを利用する際、顧問税理士と相談し、出来高部分を「部分完成」として取り扱うことで、収益計上とファクタリングのタイミングを一致させる工夫を行いました。
完成工事未収入金と売掛金の区分処理
建設業の会計では、工事に関する債権は「完成工事未収入金」として、資材販売など工事以外の債権は「売掛金」として区分します。ファクタリングを利用する際も、この区分に従った処理が必要です。
例えば年商9,000万円の総合建設会社では、工事売上のほかに建材販売も行っており、両方の債権をファクタリングしていました。このケースでは、会計処理を以下のように区分していました。
工事代金2,000万円のファクタリング: (借方)現金預金 1,900万円 (貸方)完成工事未収入金 2,000万円 (借方)支払手数料 100万円
建材販売500万円のファクタリング: (借方)現金預金 475万円 (貸方)売掛金 500万円 (借方)支払手数料 25万円
この区分処理により、財務諸表上で事業別の資金化状況を正確に把握でき、経営分析の精度向上にもつながりました。
出来高払いとファクタリングの組み合わせ
建設業、特に大型工事では「出来高払い」が一般的ですが、これとファクタリングを組み合わせる場合の税務処理にも注意が必要です。
例えば年商3億5,000万円の建設会社が1億2,000万円の大型工事を受注し、30%、30%、40%の3回払いで契約した場合を考えます。第1回目の出来高(30%)が確定した時点でファクタリングを利用すると、以下の処理が必要になります。
まず出来高確定時に収益を認識: (借方)完成工事未収入金 3,600万円 (貸方)完成工事高 3,600万円
次にファクタリングによる資金化: (借方)現金預金 3,420万円 (貸方)完成工事未収入金 3,600万円 (借方)支払手数料 180万円
このケースでは、出来高の確定(検収)と収益認識が先行し、その後にファクタリングによる資金化が行われる点がポイントです。未検収の工事部分を先行してファクタリングすることは、税務上のリスクにつながる可能性があります。
ファクタリング手数料の税務処理
手数料の費用計上タイミング
ファクタリング手数料の費用計上タイミングは重要な論点です。一般的には債権譲渡時(ファクタリング実行時)に全額を経費計上するのが原則ですが、状況によっては期間按分が必要なケースもあります。
例えば年商2億円の建設会社が3,000万円の工事代金をファクタリングし、手数料150万円を支払った場合、基本的には取引時に全額を経費計上します:
(借方)支払手数料 150万円 (貸方)現金預金または未払金 150万円
ただし、ファクタリング契約が決算期をまたぐ場合や、手数料の金額が大きい場合には、税務調査において期間按分を求められる可能性があります。
年商1億8,000万円の建設会社では、決算月(3月)の直前に5,000万円の大型工事代金をファクタリングし、手数料250万円が発生しました。支払期日は4月末(翌期)だったため、税理士のアドバイスに基づき、手数料を期間按分して処理しました:
当期分(1ヶ月分): (借方)支払手数料 62.5万円 (貸方)前払費用 62.5万円
翌期分(3ヶ月分): (借方)前払費用 187.5万円 (貸方)現金預金または未払金 187.5万円
手数料の勘定科目選択
ファクタリング手数料の勘定科目として、「支払手数料」「支払利息」「営業外費用」など複数の選択肢がありますが、取引の実態に合わせた適切な科目選択が重要です。
建設業では、ファクタリングを金融取引として捉える場合は「支払利息」、債権譲渡として捉える場合は「支払手数料」とするのが一般的です。特に償還請求権の有無が科目選択の判断基準となります。
年商1億2,000万円の内装工事会社では、償還請求権なしのファクタリングについては「支払手数料」として処理する一方、償還請求権ありのファクタリングについては「支払利息」として処理していました。
また規模の大きな建設会社では、「ファクタリング費用」として独立した勘定科目を設けるケースもあります。これにより財務分析の際にファクタリングコストを明確に把握できるメリットがあります。
消費税の取り扱い
ファクタリング手数料に対する消費税の取り扱いも重要なポイントです。ファクタリング手数料は基本的に課税取引となり、仕入税額控除の対象となります。
例えば年商1億円の建設会社がファクタリング手数料100万円(税抜)を支払った場合、消費税10万円も含めた110万円が実質的な費用となりますが、この消費税分は仕入税額控除の対象となります。
ただし請求書等の保存要件を満たしていない場合、仕入税額控除が認められないリスクがあります。特にインボイス制度開始後は、適格請求書発行事業者からの請求書等の保存が必要となるため注意が必要です。
年商2億5,000万円の建設会社では、月間数件のファクタリングを利用していましたが、請求書の保存漏れにより一部の手数料について仕入税額控除が認められなかったケースがありました。以降、同社ではファクタリング専用のファイリングシステムを導入し、すべての取引について適格請求書の保存を徹底する体制を構築しました。
建設業のファクタリングにおける税務リスクと対策
収益認識のタイミングに関するリスク
建設業におけるファクタリングの最大の税務リスクは、収益認識のタイミングに関する問題です。特に工事未完了または未検収の段階でファクタリングを行うと、税務上の収益認識時期が前倒しされるリスクがあります。
例えば年商5,000万円の建設会社が、工事完了前に発注者から仮払いを受ける予定の1,000万円について、仮払い通知書を元にファクタリングを利用したケースがありました。しかし税務調査において、この取引が「売上の前倒し計上」と判断され、追徴課税を受けることになりました。
このリスクを回避するため、ファクタリングは必ず工事の完了・検収後、または正式な出来高確認後に行うことが重要です。また出来高払いの場合は、発注者による出来高確認書などの客観的証拠を保存しておくことが安全策となります。
グループ会社間取引における注意点
建設業では元請・下請のグループ構造を持つケースが多く見られます。グループ会社間の工事代金をファクタリングする場合、特に注意が必要です。
例えば年商3億円の建設会社(親会社)と年商8,000万円の内装工事会社(子会社)の間の取引では、子会社が親会社からの工事代金3,000万円についてファクタリングを利用しました。しかし税務調査において、通常より低い手数料率(1.5%)でのファクタリングが「グループ間の利益調整」と判断され、質問を受けるケースがありました。
グループ会社間の取引をファクタリングする場合は、手数料率や取引条件が市場水準に照らして妥当であることを示す資料を整備し、取引の経済的合理性を説明できるようにしておくことが重要です。
税務調査対応のポイント
ファクタリングを積極的に活用している建設会社は、税務調査においてもその取引実態や会計処理について説明を求められることがあります。適切に対応するためのポイントを押さえておきましょう。
まず基本的な取引証憑の保存が重要です。ファクタリング基本契約書、個別の譲渡契約書、債権譲渡通知書、ファクタリング会社からの入金証明、手数料の請求書などを整理して保存しておきます。
次に取引の経済的合理性の説明準備も必要です。なぜ借入ではなくファクタリングを選択したのか、その手数料コストは妥当なのかといった点について、事業上の必要性や判断根拠を説明できるようにしておきます。
年商1億8,000万円の建設会社では、ファクタリング利用の都度、「ファクタリング実行稟議書」を作成し、その中で資金需要の背景、複数社の手数料率比較、総コスト分析などを記録する習慣をつけていました。この資料が税務調査時に役立ち、スムーズな対応ができました。
ファクタリングと税務戦略の成功事例
事例1:季節変動対策としてのファクタリング活用
北海道の年商7,000万円の建設会社では、冬季の工事減少による資金繰り悪化が課題でした。この会社は税理士のアドバイスに基づき、季節性を考慮したファクタリング戦略を導入しました。
具体的には9月から11月の繁忙期に完了する工事(合計約3,500万円)のうち、支払いサイクルが長い案件を中心に約2,500万円分をファクタリングで資金化。これにより12月から2月の閑散期の運転資金を確保しつつ、ファクタリング手数料(約125万円)を当期の経費として計上することで、好調期の利益を圧縮する効果も得られました。
翌期の3月には再び工事が増加し始めるタイミングで資金需要が発生するため、2月決算の同社では、決算月に近い時期に再度ファクタリングを実施。この戦略的なファクタリング活用により、資金繰りの安定化と税負担の平準化を同時に達成しました。
事例2:法人税の中間申告対策としての活用
千葉県の年商2億5,000万円の建設会社では、上半期に利益が集中する傾向があり、中間申告における法人税の前払い負担が大きいことが課題でした。この会社は税理士と相談し、中間申告対策としてファクタリングを活用する方法を導入しました。
具体的には中間申告期間の終了間際(第2四半期末)に、完成間近の大型工事(8,000万円)のファクタリングを実施。これにより約400万円のファクタリング手数料が発生し、中間期の利益を圧縮する効果がありました。結果として中間申告における前払い法人税が約150万円減少し、資金繰りの改善につながりました。
ただしこの戦略は単なる税金対策ではなく、真の事業ニーズ(早期の資金化ニーズ)に基づくものであることが重要です。同社では各工事の資金需要予測と連動させ、真に必要な案件についてのみファクタリングを活用する方針を徹底していました。
電子インボイス時代のファクタリング税務処理
2023年10月からのインボイス制度開始により、ファクタリングの税務処理にも変化が生じています。建設業界でもこの変化に対応した処理方法の確立が急務となっています。
適格請求書等保存方式への対応
インボイス制度導入後、ファクタリング手数料に係る消費税の仕入税額控除を受けるためには、ファクタリング会社が「適格請求書発行事業者」であることと、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。
年商1億6,000万円の建設会社では、取引しているファクタリング会社5社すべてについて、適格請求書発行事業者の登録番号を確認・記録する体制を構築しました。また電子データで受領したインボイスについても、電子帳簿保存法に準拠した形で保存するシステムを導入しています。
特に建設業では紙ベースの書類管理が主流だったため、デジタル対応が遅れている会社も少なくありません。しかしインボイス制度への対応は、ファクタリング取引だけでなく、すべての仕入取引に関わる重要課題であるため、早急な体制整備が求められます。
電子契約とデジタル証憑の税務上の有効性
ファクタリング取引においても電子契約やデジタル証憑の活用が広がっています。これらは税務上も有効な証憑となりますが、一定の要件を満たす必要があります。
年商3億円の建設会社では、クラウド型の電子契約サービスを導入し、ファクタリング基本契約から個別の債権譲渡契約までをすべて電子化。電子帳簿保存法に対応したシステムで契約書を保存することで、ペーパーレス化と同時に税務対応の効率化を実現しています。
電子データでの証憑保存では、改ざん防止措置や検索機能など、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。特にタイムスタンプ機能や閲覧履歴の記録など、データの真正性を担保する機能が重要です。
建設業では工事現場と経理部門の連携も重要になるため、クラウド型のシステムを活用し、現場で撮影した工事写真や検収データなどをリアルタイムで共有・保存できる体制を構築している企業も増えています。これにより工事の進捗状況とファクタリングのタイミングを最適化し、税務上も安全な資金化が可能になります。
ファクタリング税務処理の最適化による経営改善効果
ファクタリングの税務処理を最適化することは、単なる法令順守を超えた経営改善効果をもたらします。特に建設業では資金繰りと利益管理の両面で大きなメリットが得られます。
プロジェクト別収益管理の精緻化
年商2億3,000万円の総合建設会社では、ファクタリングの税務処理を見直す過程で、プロジェクト別の収益管理システムも刷新しました。具体的には各工事のファクタリング手数料を「直接原価」として計上し、工事別の実質利益率を正確に把握できるようにしました。
例えば4,000万円の商業施設改装工事では、表面上の利益率は15%でしたが、ファクタリング手数料(200万円)を考慮した実質利益率は10%でした。この分析により同社は見積段階での利益率設定を見直し、ファクタリングを前提とする案件では目標利益率を3%高く設定する方針に変更。結果として全社の平均利益率が2.8%向上し、収益構造が改善しました。
税務コンプライアンス強化による企業価値向上
東京都の年商1億8,000万円の内装工事会社では、ファクタリングの税務処理適正化をきっかけに、全社的な税務コンプライアンス体制を強化しました。
具体的には顧問税理士の指導の下、「税務処理マニュアル」を作成し、ファクタリングを含むすべての財務取引について標準的な処理方法を文書化。また四半期ごとに税理士による処理チェックを実施する体制を構築しました。
この取り組みにより、金融機関からの評価が向上し、新規の融資枠獲得や金利の引き下げにもつながりました。さらに公共工事の入札資格審査においても、財務健全性の評価が上がり、より大型の案件を受注できるようになるなど、本業への好影響も現れました。
適切な税務処理は単なるコンプライアンス対応ではなく、企業の信頼性向上と持続的成長のための重要な基盤といえるでしょう。特にファクタリングのような金融取引は、その処理方法が企業の財務体質を大きく左右するため、建設業経営者にとって理解すべき重要テーマといえます。
適切な税務処理と戦略的な資金調達を両立させることで、建設業の抱える資金繰り課題を克服し、持続的な成長を実現することが可能になります。ファクタリングという金融ツールを単なる「つなぎ資金」としてではなく、経営戦略の一環として位置づけ、その税務面のメリットも最大限に活用することが、これからの建設業経営の重要なポイントとなるでしょう。

